『デビュウ』
「……ボクが悪かったんやよ」
「葛山……、そんなに自分を責めるんじゃない」
「ここのとこ、仕事にばっかりかまけてたから……。それが、こんなことになるなんて、ボク一体どうしたらいいんやろ」
「しょうがないじゃないか、俺たちは役者なんだ。仕事がないことにはここの家賃だって払えない。時代劇出演を控えて、鬘あわせだ衣装あわせだと忙しいのは、葛山のせいじゃないさ」
「でも大塚くん、ボクなんや目覚め悪くて……。それにファンの人にこんなことなんて言ったらええの？」
「……それは……」「……いーかげんにしてくださいよ！２人とも！俺のこれは、ドラマの為だって言ってるでしょう！！」
「やってオダギリくん、いきなしそんなパツ金で帰ってくるんやもん」
「そうそう２５歳にしてヤンキーに転職かと思うのがフツウだよなぁ」
「そうそう。ボク、クニのおかーさんになんていったらいいのかって思ったよ」
「なんで葛山さんが俺の母親のことまで気にするんですか！？」
「え？だってそれ、年長者のツトメやろ？」
「そうそう。人生の先輩としては、後輩が道を行きつ戻りつしているのを見るのは忍びないからな」
「……大塚さんまでそんな……。ヒドイッ！」「あ、あった。ハイ、オダギリくんこれ良かったら」
「……これはいつたい」
「お、懐かしいもん出したな〜。じゃあ俺からはこれを貸してやろう。貸すだけだぞ、ちゃんと返せよ」
「これ見てヤンキーのベンキョしてな、オダギリくん」
「ヒーローものとツッパリくんの役は、若手男優なら一度は通る道だからな。がんばれよっ、オダギリ！」
「…………」「あ、でもオダギリくんヤンキーデビューするんなら、急いでバイクの免許とらんと」
「そうだな。車のるのは上のもんと決まってるからな。入門したてのヤツは、やっぱりバイクに２ケツからだろう。いい教習所教えるぞ」
「免許取ったらみんなしてどっかいこうな？どこがいい？」
「…………」「待て待て確かまだ教本取ってあるはず……」
「あ、バイク雑誌も貸してあげるし。成田さんたちにも連絡とって見たほうがいいかな？」
「そうだな、ウィリーくらいできないとサマにならんからな」
「電話してみよ。……あ、もしもし、成田さん？葛山です〜。どうもお久しぶりですぅ」
「…………」
一ノ宮華都比呼に幸多かれ！
決して！オダジョのパツ金が悪い、というのではないのですが……。早く黒髪に戻ってね！（笑）