『ゲイジュツの秋』

「なぁ、オダギリくんあれ、もぐらたたきやの？」
　葛山さんはとてもナチュラルにそう云った。
「はい〜？」
　もぐらたたきといえば、あの一世を風靡した体感ゲームの？や、もちろんやったことはあるけど……。タンジュンなだけに、むきになってしまう、おそるべきゲームだ。うん、ゲームには人生が縮図のようにつまっている。
「もぐらたたきって？最近してませんけど」
　ストレートにオダギリが返すと、ちゃうちゃうと、一条スーツ姿のまま葛山さんは手を振った。
「ＣＤのコトやん」
　ＣＤというと葛山さんと同時発売の、イチオウカテゴリ的には『仮面ライダークウガ』になってるけどぉ〜、というシロモノ？ダレがシロモノにしたの？というつっこみは、結構四方八方から、イタイ。
「オダギリくんのジャケットって、変えたんやろ？あのシブイのから」
「そうですけど」
　今やっている、奈々ちゃんとおやっさんのシーンが終わったら、次はオレたちのプレゼント告知だ。だからもう出番もないのに、お互い五代と一条さんのまんまだった。
「やっぱカワイイから？」
「っていうかまぁ……。って葛山さんオレのことですか〜？」
「うん。だって似とるやろ？」
　ぴこぴこハンマーで叩きたくなる。という。もしかしてまだぴこぴこハンマー計画をあきらめてないのか。
「ちがいますよ！だいたい、もぐらたたきだったら、もっといっぱいいるでしょう！？」
　しまった、と思ったときにはもう遅い。葛山さんは笑いの沸点が低いのだ。腹を抱えて笑っている。
「おーだーぎーりー」
「わぁ、カントクごめんなさい！」
　わざとじゃないんです。
　笑い上戸な葛山さんと、葛山さんのツボ言葉をひょいひょい云っちゃうオレと。

　

　結局葛山さんは本番でも笑ってしまって、でもそれもまたファンが喜ぶだろうという理由でそのままオンエアされた。
　葛山さんはどうやら、それを見ただけで、思い出して笑えてしまっているようだけど。

　

　

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