『サインと休暇とファン心理』
「杉田さん、ちょっとお願いがあるんですけど……」
「ん？なんだ」
「１７日の代休をですね、杉田さんの１５日の交換してもらいたいんですが……」
「１７日？どれどれ……」
ぱらぱらと手帳を開く。
「ああ、大丈夫だ」
「ありがとうございます！ああよかった〜。銀行いかないとヤバいんですよ、もう」
「１人もんはツライな」
だから早くいい人見つけろ、とまでは言わない。プライバシー、プライバシー。
「はぁ。あれ？杉田さんそれ……」
「ああ、これか？」
「第４号の写真ですよね？うわ、これ持ってないです。いいなぁ、どうしたんですか？」
手帳に挟み込まれているのは紛れもない未確認生命体第４号、変身前を五代雄介と言うのは、もう捜査本部のみんなが知っている。
「葉月がな」
杉田が愛娘・葉月のことを話すときは、まるで初恋の人のことを話すようだ、とはもっぱらの噂であった。
「お守りにって、くれたんだ。きっとまたパパを助けてくれるよ、ってな」
えー話である。杉田を大先輩としてこよなく尊敬し、かつまた熱血人情家の桜井は、それだけでもらい泣きしそうになった。しかし。
「これ……、なんのサインですか？『４』？」
「これか。これは五代くんが書いてくれたんだ。何かのときに見つかってな、それならご利益をあげるためにサインでもしましょうか、って。まさか『五代雄介』って書くわけにもいかないから、『４』ってな」
てれくさそうに言う杉田の前で、桜井は雷にうたれでもしたように立ち尽くしていた。
「おい、どうした？」
「ズルイ……」
「は？」
「俺なんて、まだ変身するとことも見たことないのに、杉田さんは五代さんと一緒に行動してお話して変身見てサインまで……」
「おい、どうした桜井、しっかりしろ！」
「杉田さん、桜井さん、科警研の榎田さんから資料が届いて……。どうかしましたか？」
「ああ、一条。なんか、桜井の様子がちょっとおかしくてな」
「気分でも悪いんですか？桜井さん」
「……一条さんもたくさん持ってるんでしょうね。……ああ、でも一条さんにはそんなの必要ないか……、は、ははは……」「あいつも大分疲れてるようだな」
「医務室に連絡しなくて大丈夫でしょうか？」
ちょっと離れてしまう、我らが特別合同捜査本部だった。
（２００１．０３．１３）
いやぁ〜、ははは。
ゴメン！桜井さん！悪気はないのよ、とだけ言っておこう！