ダウンロード |
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「ダウンロードされてると思わないか？」
「何が？」
ホテルの一室で、持込のパソコンをカタカタはじめたかと思ったら、今はＤＶＤを見ているようだった。それも『王の帰還』を。
自分の出演した映画は生々しくて、すぐには見ることが出来ない。もっとずっと時間がたってしまえば、まったくの別物として楽しむことも出来るのだが、今はまだ駄目だった。勉強のためにも、見なくてはならないのは分かっているんだが。
「故国を愛する気持ちとか、守ろうという気持ちとか」
パソコン場面は今、アラゴルンが「フロドのために！」と駆け出していくところだった。
ホテルはすべからく照明が暗い。そんな中、書き物机だけはデスクライトが備えつけられているので、ヴィゴはそこでパソコン屋さんを開いていた。ところでさっきまでやっていた『脚本』はもう終わってしまったんだろうか？
そう聞くと。「脚本？ああ、今日の部はもう終わり」
「……もうかい？」
「そんなに進むもんじゃないよ」
「聞いてもいいかい？」
「どうぞ」
くつろぐには程遠いイスなのも、書き物机備え付けでは致し方ないだろう。それでも、座る人間は最大限にくったりとくつろいでいたが。
「１日にどれくらい進めているんだい？」
指を折って数えだしはじめた！その指１本のカウントの単位は、いったいどれくらいなんだ！？
「……１日にだいたい……１０行くらいかな？」
小首を傾げるなというに！かわいいじゃないか、もうっ！！「……ヴィゴ、そのペースでいつ終わるんだい……？」
「さあ？」
「さあって……」
「別に〆切りのあるものでもないし、１年でも２年でも、ＥＮＤマークが打てるまでいつまででも書くさ」
伸ばし気味の髪が、さらりとゆれた。ハイハイハイ、かたつむりさんに「君ってチーターよりも足が遅いね、のろいねっ！」みたいなことを言ったワタシが悪うござんした！
「それでさ、ダウンロードなんだけど」
よっぽどその話がしたいらしい。ハイハイどうぞ、と聞く体制になった。
でも風呂から出たてなので、髪をしっかり拭くことは忘れない。風邪は嫌だ。
「お母さんのお腹の中にいるときにでも、一緒にダウンロードされてるんじゃないかと思うんだよ。でないとこの盲愛は説明がつかない」
「一緒に？何と？」
「息をすることとか、お乳を吸うこととかそういうことと一緒に。生存情報と、一緒に」
詩人だねぇ。夢見るようなまなざしで、ヴィゴはそう言った。「人を愛することも？」
「愛することも」
そう言うとヴィゴの目は、夜の獣のようにちかりと光った。映画では今、西方諸侯とオークたちが入り乱れて戦っている。ソファに座っているわたしのところまで来たヴィゴは、髪から首に手を滑らせながらゆっくりと言った。
「ダウンロードされた？」
「されてるよ、しっかりと」
何に刺激されたのか、キスはずいぶんとねっとりと、濃度の濃いものになった。
パソコンからは音量を落とした叫び声が聞こえていた。
「あそこにいたかったな」
「どこ？ミドルアース？それともここに？」
「ここにはもういるだろう？」
目の前に立つヴィゴの背と腰に手を回しながら見上げるのも楽しかった。ついアングルについて考えてしまうのはもう職業病だ、治らない。治すつもりもないけれど。「あの黒門前に、君のアラゴルンの隣に立ちたかった」
「立ってたようなもんだろう？『ボロミア』は誰の心の中にもいたよ」
「でも身体はいない」
ヴィゴの身体をまさぐり始めると、彼もわたしの頭を抱え、身をそらすように押し付けた。
「だからあの映画はまだ見られないよ。出演したわけでもないのに」
苦笑した息に、ヴィゴは身を振るわせた。
「あんたが『アラゴルン』にダウンロードしたくせに」
「何を？」
「……ゴンドールのために、……あ…うっ……く、生きることを……」
切なげな吐息を聞きながら、ズボンを下ろした尻を揉み、もっとも奥まで手を彷徨わせ、胸の毛を啄ばみながら乳首を転がしだした。「甘い……」
「わけ、ないだろう……」
さっきは狩る獣のようだった瞳が今は、欲と快感にけぶってゆれている。それを見るこちらの目のほうがきっと、今は狩をする獣のようになっているだろう。
「わたしの味覚を信用してないな」
「だれが……あっ！」
ヴィゴが鋭く叫んだのは、わたしが彼自身を口に含んだのと、後孔に指を忍ばせたのとどちらのせいだろう？なるべく音を立てるようにして、ヴィゴの耳まで届くようにと。
「あ…ん………ああ、んぅ……ショ…ォン…あ…」
立っていられなくなっているヴィゴの膝を、わたしの足にもたせかけた。その震えさえ、ソファなんかには任せられない。
何もかもすべて、わたし自身が感じ取りたかった。
「濡らそうか……濡らす？」
軽く達したヴィゴの目はとろんとしたままだった。その顔を見るのが好きだ、という気持ちもこれも、母の胎内でダウンロードされたものなのか？だとしたら、あの中というのはなんと奥深い。
「舐める……舐め、たい」
だっこするように抱えていたヴィゴは、するりとわたしの膝から降りた。そのまま、自分のものをしごきながら、わたしを咥えた。
しながらされているようで、とこれは結構な彼のお気に入りだった。だったらいっそ、シックスナインにでもすれば？とためしたこともあったが……それはあまりお気に召さないようだった。
アルツールのように、腕を伸ばすことが出来るのなら、ここでヴィゴの後ろをかわいがってやることも出来るんだが……と思いながら、ヴィゴの舌と口と指を全身で味わっていた。
「い、いよ…ヴィゴ………いい……」
しゃべることは出来ないので、ヴィゴはわたしを咥えたまま見上げてきた。
「………」
その目が満足そうに、ちかりと瞬いているような気がした。
終わりは、思っていたのよりは早く、もっといつまででもと思っていても終わりは来て。「ヴィ、ゴ……も、う……」
そう言ったからといって、口を離すような奴じゃない。面白がって、より強く吸い上げ舌を使い、絞り込むのがヴィゴのやりかただった。この時もそうで、ただでさえ終わりそうだった快感の、絶頂はさらに早まることになった。
「あ……あ、あ……あっ……」
腹の波打つのに気を取られているうちに、ひやりとするのを感じた。ということはヴィゴが口から出したということなんだろう。喘いでいる間閉じてしまっていた目を開けると、顔から喉から胸元にまで、転々と白濁した液体をつけて笑うヴィゴがいた。ああまた、そんなにつけて。
「まず」
「なら舐めるなよまったくもう……またこんなにして……シャツにもついてるぞ」
「あとで洗うよ」
シャツの袖を抜いて、それでごしごし擦らないように、といつも思うんだが。
「少し着てるってのもそそるんだけど……」
「何言ってるんだか」
少し舐めて濡らせばいいはずなのに、達してしまったからそれはふにゃふにゃだった。「さすがにこれじゃ入らないか」
「無理だろうね」
「それじゃこっちで……」
ヴィゴはまた膝に乗り上げて、股間でわたしを擦り始めた。
「これはこれで良くない？」
「もちろん」
「『もちろん』？」
言葉遊びのような応酬も、きらいじゃない。
「いいに決まってる……次くらいにね」
「何の次？」
余裕さえあれば。笑いながらヴィゴは聞き。
「さて何だろうね」
そらっとぼけてわたし答えた。
「これもダウンロード〜♪」
また固さを取り戻すが早いか、ヴィゴはわたしを取り込むべく腰を落とした。
「品のないジョーク……」
「ジョークなんてそんなもんだろ？」
「どっちかっていうとアップロードなんじゃ……」
「どっちもアリ」
音の立つキスをヴィゴにされた。狙いを定めて頭を掴まれて、わざと歯と歯をぶつけながら。
そんなことをしなくても、逃げやしないっていうのにまったく。
「動いてショーン……元気良く！」
「ハイハイ」
「ああっ！……うん……あ……あ…ん……あ……ぅ」
「お気に、…召しましたでしょう、か？」
「うん……あ……イイ……」
「それは、…良かった………く、うっ……も、ちょっとお手柔らかに……あっ……」
「むり……ごめ、ん……む、り……あ、あ……っ！」
今度もきっと早めの予感。当たっても、ちっとも嬉しくない予感。
がんばれ自分！と励ましながら。
どうしちゃったんでしょう？
思い出したようにエロスが炸裂するのは何故？
書きもの的発情期なのか？
それともエロスゲージとかがあって、たまるとバーン！と破裂するのか？
『黒髭危機一髪！』ゲームみたいに？（笑）
やがてパソコンからは白々とエンディングテーマが流れ
お２人さんはその頃いったいナニをしているのかっ！？
止めてからやんなさい！止めてから！！（笑）
娘さんたちと一緒のプレミアの夜とか〜♪と思って書いたんだけど
そういう話がいっこも出てこなかったなぁ……。