犬 |
「もう、すこ……し、……あ……こを……あ、い……」
「ここ、かい……？」
「そう、そこ、を……っ！！」
言うほうも聞くほうもたいがい、息も何もかも弾みきっている。
だから要求するのも、それを確認するのも一苦労だった。
こんなに何回もくり返していてもそれは変わらない。何度しようとそのときの気分をいうものがあるし、好みだって変わる。だからなるべく要求があれば言うようにしていたし、応えられることなら応えられるように心がけていた。たまにそれが出来なくてがっついいて、相手に怒られることもあったのだが。
「ここ？ここ……なのかい、ヴィゴ？」
「そうそこ……ああ、どうにかなっちまいそう……だ、ぁ……」
そういうことをするのは部屋の中で、オフィシャルスペースでの愛情表現以上のものは控えること。これがヴィゴの家とショーンの家での取り決めだった。主に子供たちの要求した。
だから、こういったことしたくなったときには、お互いの一目散にベッドルームに駆け込まなくてはならなかった。「そこ……もっと、……あ、あ……いぃ…！」
「こっちも……いい、よヴィゴ……溶けそう、だ……」
ショーンは後ろからヴィゴに挑んでいた。
後ろに向けて伸ばした手と、指をからめてつないでいたので少し腰を打ちつけづらかったがそのもどかしさがまた、たまらない愉悦をもたらしていた。ショーンもよりヴィゴに近づこうとするように押し付けているし、ヴィゴもよりショーンに穿ってもらうために押し付けていたし、手と手を結んで、お互いに捻りあうようにした場所から広がるものを甘受していた。
「い……さい、こ…ぅ……」
よくてよくてよくて、このまま溶けてなくなっても不思議はないほどで。
いつもどうしてこんなにいいんだろうと思いながら陶然としていた。
「もって、いかれそうだよ……」
火照りきった顔でうっとりと汗ばんだ背を見下ろしながらショーンも言った。
だいたい好きだからといって、愛しているからといって、こんなに身体の相性がよかったことなんてあるんだろうか？と思った。以前のことはあいにくともう、さっぱり思い出せないくらいだった。手をつないでいるだけではあきたらなくなったので、お伺いを立てた。
「ヴィゴ……手を、動かすよ？」
そのために少し動きを止め、耳元で囁くとそれだけでもう達しそうだ、とヴィゴは目を細めた。
嫌がるような素振りもあったが、前はもう限界なのだろう、首を振りながら離そうとした手をしかし、ショーンはそのまま持っていた。
「ショーン？」
「わたしは、『動かす』と言ったんだよ、ヴィゴ」
耳を甘噛みしながら言うと、ヴィゴの顔は気の毒なくらい真っ赤になった。
ヴィゴはヤラられた、と思っているのかもしれないが、その身体でしめつけて、ヤラれているのはこっちのほうだ、とショーンは思った。
「『離す』とは言っていない……」
「あ……」
身を乗り出すようにして囁くと、自然と奥深くまで進ませることになる。ヴィゴは絶え入るような声と共にまた感じているようだった。「いい……かい？」
「い……ぁ……」
ヴィゴの手を掴んだまま、手を伸ばしていった。
「あ、……ショーン……？」
「このまま……」
「あ……あ、ぁ……」
ヴィゴの指越しにヴィゴの乳首を抓んだ。
「どうだい？力加減は？」
「あ……あ……」
「いい、かい？」
ヴィゴは何度もこくこくうなず、こうとしたのだろう。顎をベッドにつけたままでは、首を振るのも容易ではないだろう。
「あ――――っ！」
もう一方の手でヴィゴを強めに扱くと、たちまち甲高い悲鳴のような声があふれた。
「ヴィゴ？」
心配になって声をかけると、ヴィゴは。「も……っと、こ……ああ、あぁっ！！」
掴んだ手で腹を押さえるようにするのがたまらないようだった。
ヴィゴの中に収まっているものにも響く、ヴィゴの腹越しに伝わる圧力が、より強い締めつけとなるからだった。「うそ……や…、やっ……ぁ……」
「や？いや、なのかい？」
耳を噛みながら、律動を送りながら、胸の飾りを抓みながら、伸びかけた髭で擦りながら、ヴィゴの先端を愛撫しながら、興奮していた、とても。その鼻息の荒さを知られたら、軽蔑されてしまうんじゃないかと心配になるくらいに。
「あ、ショ、……ン、ショーン……あ……いや……も…っとぉ、…あ……」
「いいかい？」
ヴィゴの答えに気をよくして、ショーンはまた問い掛けた。しかしヴィゴの答えはまだ与えられなかった。
「あん、た……は？」
「わたし？」
「そ……ぁ……ああ、あ…、ぁ……すご…おお、き……あっ、あ……」
「すごくいい……」
図らずももらしてしまったヴィゴの感想に気をよくしながら、ショーンも答えた。「い、い……？」
懸命に振り返ったヴィゴの顔は赤く、目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「いい、最高にいい」
「さいこ、……ってだれ、と……あぅっ」
「だれでも、ない……よ……今日が……すばらしいって、あ……こと、さ……あ、あ……」
「なら、い……あ、あ、あ……！……ショーン、ショーンっ！！…あ……も、ぅっ」
「うん……そろ、そろ……もったいないけど」
「バカ……あ……あ、ぁ……」
しまいには声も出なくなっていった。とくかくよくて。
気持ちよくてどうにかなりそうで。
いっそどうにでもしてほしいくらいで。
ずっとそばにいてほしくて。
おわりにしてほしくてしてほしくなくて。
「あ――――っ」
「……くっ…っぁ……」
最後にはいつも、そうなるのだった。
「あーよかった！」
ベッドボードを背もたれに座って、情後の一服をしながら、ヴィゴは満足げに笑いながら両手を伸ばした。
「……うん、そう、だな……」
同じく火を点けたタバコを一口味わったショーンは、さきほどまでの時間を思い出して顔を赤らめて答えた。
２人とも裸のままだったが、かろうじて下半身は掛布でかくされていた。
「なんだよーこの照れ屋さん♪」
ヴィゴは隣に座るショーンの頬をちょん、とつついた。
「な、なにするんだ危ないだろっ」
タバコを持っているんだから！とショーンは抗議した。
「持ってないほうの手だから大丈夫だよ。あんた本当に照れ屋だなぁ」
ヴィゴはしみじみそう言った。
「最中はあんなにすごいのに」
ショーンはまた赤くなった。完熟トマト色〜とヴィゴがからかう色だった。だからつい、美味しそうに思えてキスしてしまうのだった。
「な、な……っ！」
「あーんなこともこーんなこともするってのになぁ」
「だ、だからといってだな！ものには限度と言うものがだな！」「そんなんじゃダメなのかな？」
枕元に常備してあるミネラルウォーターを、一口飲んでからヴィゴはショーンにも差し出した。ショーンもありがたく一口飲んだ。何しろ声を限りに叫びつづけたようなものだから、ひと舞台終えた後程度には喉が乾いているなのだった。
「間接キス〜♪」
ヴィゴが人の悪い笑みを浮かべてそう言うと、子供のように照れて口を拭いたりするところがかわいいところなんだよなぁ、とヴィゴは思うのだった。かわいい男ってサイコウだよな、とまたタバコを吸って。
「な、何が！」
「え？」
「何がダメなんだ？」
話しをそらすためなのは明白だった。それだけショーンにとっては間接キスはダメージの大きい指摘だったのだ。それ以上は平気なのに何故？ときどきものすごーく大胆で、ヴィゴのほうが赤面するようなプレイだってへっちゃらでリードするくせに、時々顔を出すこの初々しさはいったいナニ？一粒で二度以上オイシくて得した気分になるからいいけど、とヴィゴは思っていたが。「いや、こんなじゃとても……」
「とても？」
案の定ショーンは、ヴィゴがうつむいて話すと顔を寄せてきた。
聞き取れないのもさることながら、照れ屋なわりにはガードが甘いのだ。それが、相手が自分だからならいいけどな、とヴィゴは思っていた。
「一休みしたらもう一回なんて言えそうもないな、と思って……」
ショーンを見つめるヴィゴの目は潤んでいた。１００％本気だった。本気でもまた、あの時間をショーンと持ちたいと思っているのだった。
「……泣いてた、けど……平気？」
「泣いて……ああ、平気。あれは生理的なもんだから」
「……痛くない、か？」
「あそこが？……少しひりひりする、かもしれない、けどしたい」
「……なら……」
「ショーン？」
「なら……わたしも……」
「……ショーン」
「……ヴィゴ！」
言うが早いか、ショーンはヴィゴをベッドの上に縫いつけた。この切り替えの早いところも、ヴィゴは気に入っていた。「ショーン、ショーン……ああっ」
たちまちまた身体の上に、キスの雨を降らせ始めたショーンの頭を掻き抱きながらヴィゴは言った。
「ああ……ショーン……あんた最高……」
今度はヴィゴの乳首に歯を立てたり舐めたりしながら、ショーンは言った。
「当然……」
打って変わって自信たっぷりにそう言ったショーンのセリフに、ヴィゴは口元で薄く笑った。
「あ、あ……ああ……」
ショーンの背筋を撫ぜながら、ヴィゴはうっとりしていた。ショーンが与えてくれるもの、ショーンに与えていられるもの。
「ああ、ヴィゴ……」
喉元に伸び上がってきたショーンは、匂いをかぐように鼻をすんすんいわせながら囁いた。
「なに？ ショーン……」
他の誰に触ってもこんなにうっとりしないよなぁ、と思いながらヴィゴは、汗の引いたなめらかなショーンの皮膚と筋肉の感触を楽しんでいた。足にあたる、これあがあとでまた……と思うと、舌なめずりが出そうだった。
「……君は最高だ」
ヴィゴの耳元に囁くショーンもきっと、同じ思いでいるに違いなかった。
何が『犬』なのかというときっと、格好がイヌっぽいのではないかと……はは。
例によってああでもなーいこうでもなーいと考えていたときは
『犬』というお題についていろいろ考えていたんですけど
冬コミでナイスなやおい本を見たりなんかして
久しぶりに豆藻やおいが呼び起こされた、というべきなのか……
そういえば暮れ頃にエロやりたいなぁ、と思ってたっけ。
エロといえばよく夏！と言われているけど、冬もいいよなぁ……などと（笑）。
ってなわけで、冬のエロです。はははのは♪
せっかくお題と干支が一緒なのに
登場人物たちが日系でないのが惜しまれるです（笑）。