双つ星
『エステル！』
「おんやまぁ、またエルフですよ。なんだか馳夫さんのことを呼んでるみたいですけども」
「『エステル』ってのはいったい？」
「ま、まさかフロドについてのなんか知らせを持ってきたんじゃ！」
「エルラダン！エルロヒア！……フロドのことは彼らに聞いてみるといいだろう。
彼らはアルウェン姫同様、裂け谷から来たのだから」「エステル！よかった、思いのほか早く会うことが出来たな」
「グロールフィンデルまで！わざわざわたし達を迎えに来てくれたのか？」
「もちろんですよ、エステル。おいでをお待ちしていました」
「アルウェンも来るといって聞かなかったんだが……」
分かるだろう？という目で見られれば、長いつきあいのアラゴルンには、どんな方法で、
あのアルウェンを押しとどめたのか知れようというものだった。
アラゴルンは、その心中を察したように苦笑すると。「それはともかく、フロドはどうした？あの指輪保持者は間に合ったのか？」
いきなり現れた綺羅綺羅しいエルフにまたまた度肝を抜かれつつも、早くそのことを聞きたくてやきもきしていたホビット達の
気持ちをを代弁するかのように、アラゴルンは尋ねた。
アラゴルンの見立てでは、あやうくとも、裂け谷にゆだねさえすれば、あの闇の傷も持ち直すはずであった。
ああしてアルウェンに託すことが出来た以上は、大丈夫なはずと、実はアラゴルンはホビット達ほどには心配してはいなかった。
それは、裂け谷を知っているか否かの違いであったが。
「あやういところでしたが、なんとか間に合いました。アルウェンも己の恩寵にかけて指輪保持者を保護したようです」
「ありがたい」
例のしるしを切るアラゴルンの後ろでは、「フロドが助かったって！」とばかりに踊り喜ぶホビット達がいた。
「父がおかんむりでした。我らがあなたの迎えに行くと伝えたときは」
引いてきた空馬はアラゴルンに、ホビット達は、それぞれエルフと同乗し、荷運びのビルはアラゴルンが引いていった。
「指輪保持者を守りきれずに申し訳ないこをした。無事に裂け谷に入れればよかったんだが……」
「自分であなたを迎えにいけないので、怒っているんですよ」
「父にとってはあなたはいくつになっても『かわいいエステル』ですからね」
「もちろんわたしたちもあなたのことはかわいく思っていますけれど」
「……エルロヒア」
「はい？」
「……エルラダン」
「はい？」
「わたしはもうすぐ８８歳になるんだが……」
『知っていますよ』「なんだか馳夫さんの肩が落ちてるみたいなんですけど、いつもああなんですか？」
「ええ、いつもああなんです」
「エルフってのも、大変なんだなぁ……」
「はい……」
とりあえずグロールフィンデルさんには謝っておこうと思う。