Hilton in Copenhagen
ホテルのドアっていうのは最高だ。特にオールドヨーロピアンタイプ以外は。
なんてったって、オートロックだからね！
ドアの閉まる音を聞きながらキスをした。掴まれた顎が痛かったりとか、引き寄せようと押し付けられた腕も痛いほどだったりするのは別に構わなかった。
「ん……ふっ……んん……」
こっちだって負けずに、後年ハゲたらなにがしかの責任はあるかもしれないというほど後ろ頭を掴んで引き寄せていたし、着替えも何も手荷物はないのに、ジャケットを破けるんじゃないかというほど引っ張っていたから。
「ヴィゴ……、あ、あ……」
コートを放り投げて、ジャケットを脱がしあって、複雑なダンスのステップを踏むようにベッドにもつれこんだ。
「どれくらいぶりだ？いったい？」
「２ヶ月ぶり……。でもそんなことどうでもいい……」
今こうしていられるんだから。「ああ、シャワー……、いいかそんなもの」
「あとで考えよう、ヴィゴ……」
「後でいい、……アイシテル……」
「それ以外、口にしないことにしようか？愛してる！だから早く……」
「ちっくしょう、ボタンなんて考え出した奴は誰だ……」
「ヴィゴ、ちょっと腰上げて、OK……膝抜くよ……」
「ああ、ショーンだ……」
やっと素肌に出会えた時には、嬉しくてそこに顔を埋めた。ショーンはまだおれのシャツを脱がすのに忙しい。
「久しぶりだ、この肌触りも」
「触られるのもね」
くすくす笑ってキスひとつ。それが合図だった。
「ヴィーゴ、その、大変イイんだがね。もし、……よかったらぼくにもさせてくれないだろうか？」
久しぶりだと、どうしても気持ちが先に走ってしまう。走ってしまって、結局全部自分でやりたくなってしまう。この時もそうだった。
全部脱がせあった後、ショーンに覆い被さって、あちこち触りまくり、ほどなくそれを愛撫するのに夢中になって、時々もれるショーンの声を聞いてより興奮して。
「んあ？」
もれはじめた先走りでてらてらになっているだろう口のまま、目をあげる。かなり際どいところまでいっているショーンは、大変悩ましそうな様子で、それをさせているのが自分だと思うと、この上もない満足感が胸に広がった。
いや別にあんたに触っているだけで興奮するから別にいいけど、と思っていたら。
「ぼくにもね、ヴィゴ、きみを愛させて欲しいってことだよ」
ヘンな奴。
「じゃあどうする？」
「そのまま向きを変えて、そう足をこっちに。腰は上げていられるかい？」
それは出来そうだったから、こっくりとうなづいて体勢を変えた。もしかしなくても、たいそうなポーズだと気付いたのは。
「ひゃっ！」
濡れた指が１本、入って来てからのことだった。つづいて２本目。わけもないだろう。ブランクはあったけど、カラダはショーンを覚えている。期待に、そこはきっとふるえていたはず。
「口がお留守になってるよ、ヴィゴ」
そう言われても、気になって集中出来なくなった。
ショーンは前には目もくれず、ひたすらそこばかりをいじっていた。
左手で、尻を掴んで押し広げ、右手で多分とても丹念に解きほぐしている。
振り返っても、目元しか見えなかったが、興奮しきって、それでいて熱心なまなざしがそこにはあった。
自分では見たことも、ことさらに触ったこともない場所を、こんなに見られていじられて、あまつさえ――――。
「う、わっ！」
舌まで差し入れられて。熱くてやわい感触と、爪を含めた指の感触の２本立てはたまらなかった。
おまけに尻をもむことで、外からの動きも付け加えている。
「あっ……あ、ん……ショーン……」
ぢゅっと、音まで聞こえた。ちゅくちゅくという音も。
放置された前からは、滴り落ちているものが雨だれのようにショーンの腹に落ちている。ときどき、腹にすれて、それでまた走り抜ける。
だんだん腰を支えていられなくなって、ショーンの胸にもたれかかるようになる。尻だけを高く上げて、そこをもっと、というように腰を振って。
「あ――――っ、んん……ああ、あ……ショーン……、ショーン」
他に人間にはとても聞かせられない声を上げて。
「ショ、ン、も……やくっ！……い、れて……く、れっ！！」
「了解」いがくりみたいな頭に手を当てた。手触りが面白い、と思ったのは一瞬で。
次の瞬間にはショーンは入ってきた。
ずぶり、と音が聞こえたような気がした。たとえ幻でも。
この満たされる瞬間に、なにもかもひきかえにしてもいい、と思う。この瞬間には。
ショーンが遠慮がちに、でも決してひるむことなく入ってきて、もうどうしようかと思うような何かを連れてくる。
どうしようもない。気持ちいいとしか言いようがなく、切なくて、もっととねだるしかない何かがやって来る。
もっと来て、そしてこの身体を味わってと、足は交差してショーンの腰に背中にまわる。離したくなくて。
たまらない、たまらない、たまらない。
そこを掴む手、腰に当てられた手。暴れまわるショーン。
もっと、もっと、もっと。
壊してしまっても構わないから。
もっと来ていいから。
とてもよくて。もっと、もっと、もっと。
片方のベッドは汗と暴れたせいでぐちゃぐちゃなので、もうひとつのベッドに移動してごろごろしていた。
隣にはショーン。現在喫煙中。
時計はただいま５時を回ったところ。
「……腹減った……」
「もう？」
「運動したから腹減った……」
「違いない」
「よし！食べに行こう！あんたを見送りがてら！えーと……」
「それならシャワーを浴びないとダメだぞ」
「やっぱりダメ？」
「ダメ」
ちぇっ。やっぱりダメか。かつての旅の仲間は、バス＆シャワー促進組合のエージェントかもしれない。まてよ？
「一緒に入るなら浴びるけど？」
お、効いた。どうしてあんなことやこんなことをしているってのに、一緒にお風呂、っていうと赤くなるんだろう。謎だ。
「そ、それで君が入るんなら……」
何もそんな決死の覚悟みたいな顔して言わなくても。
「じゃあ一緒に入ろう。ショーン？」
まったくびっくり箱みたいなんだから、とぶつぶつ言っているショーンに。
「なんだい」
「愛してるよ」
さあ、次はどんなことをして驚かそうか？
えーと、こちらは謹んでむーさんに捧げたく。
いつぞや無理言っていただいたイラストのイメージで書きましたので（笑）。
これで公約ひとつクリア？（笑）