「ヴィゴ！ねぇちょっと開けてってば！あやまるからさっ！ヴィーゴ！」
バスルームのやわそうな戸を、ドンドンと叩いた。壊れたってかまいやしないという勢いで。
「うるさい！あっち行け！ってかとっとと帰れ！ここは俺のうちだぞ！」
そりゃ分かってるけどさ。入ってもいいヨ、と言って誘ったのはあんたでしょう？ああ、でも、あんたの気の変わりやすいおつむの中じゃ、そんな過去映像はもう残ってないか。
「どうせ借り物だろ！」
「だからなんだってんだ！」
そう言われると弱い。そもそも怒らせたのは俺のほうなので、立場が弱いことこの上ない。「ヴィーゴ！」
「やかましいっ！出るもんも出ないだろ！」
ううううううう……。一応コレでも恋する青年なんですけど……。ああ、分かってるよ、イヤなら来るな、ですね…。
とりあえずの急務は機嫌をとることだ。それしかない！言葉どおりにこれっきりにするつもりなんてこれっぽっちもない以上は努力せねば！
しかしナニをしたらいい？からかうことや、気を引くために怒らせるネタならいくらでも思いつくのに、くつろがせるとか軟化させるとかご機嫌にするにはナニを？
わりとちょっと一気に落ち込んだ。
そんなことも分からないのか？しっかりしろ、俺！
しかし思いつかないことは思いつかない。
とりあえず、ベッドをちょこっと直して、シーツは張替えて、キッチンでコーヒーでも入れておこう、そうしよう。ってかそれくらいしか出来ることないし……。コーヒーを落とし終わった頃、バターンと大きな音をさせてバスルームのドアが開いた。大変勇ましい様相であんたが出てくる。
コーヒーと俺をじろりと睨むと、推定リビングのソファにどっかりと座った。
「コーヒー飲む？」
とりあえず下出に出ておこう、と精一杯かわいらしく聞いてみる。仏頂面のあんたは重々しくうなずいた。
えーと確か、夜中に飲むときはミルクをちょっと、と。
ミルクコーヒーを差し出すと、あんたは飲み頃温度のそれを一気飲みした。「お、おかわりは？」
答えは差し出されたマグカップだった。うう、機嫌がわるいよぉ。
「あのぉ、ヴィゴ？」
おかわりを渡してから、おずおずと切り出してみる。気分はもう、おっかない先生の前に出た気弱な生徒だ。
「ご、ごめんなさい……」
「かわいこぶるな。気持ち悪い」
あ、ひどっ。「ゴメンナサイ！夢中になっちゃって、つい忘れました！」
「つい？じゃあ持ってるのか？」
ああうう……、今はサスペンスものの撮影中じゃないってばっ、な目つき。
「スミマセン、持ってません！」
まさかこんなラッキーが急に、天から降るようにやってくるとは思っていなかったから、用意なんて何もなかった。
「ボーイ、ヒニンに気をつけない奴は嫌われるぞ？男相手でも、女相手でも。セーフティセックスって言葉知ってるか？」
「知ってマス……」「気持ちよく出す方はいいかもしれないが、こっちは掻き出すのが容易じゃないわ、下手したら腹イタだわで大変なんだぞ」
ナマナマしいご意見ありがとうございます。
ってことはショーンも忘れることがあるんだ、なんてことは口に出しはしないけど。
「オーリ、今ナニ考えた？」
でも顔には出ちゃったらしい。
「いーや、何にも」
にっこり笑って答えてやった。きしし。いいじゃないの、それくらいは！ねぇ？
……懐かしすぎて涙が出そう……。
１１月のオンリーに何故か初めてのクセして花藻なコピー本を出したんですけど、
そういえば、と思って書いたんですよね。しかし、
何故花藻……？しかも豆藻前提でした……（遠い目）。
今じゃ書けと言われてもかけまいなぁ（苦笑）。
こちらはイベント配布ではなく花藻コピー本『ＮＥ』（完売）通販用のおまけ♪