「エエエリックさん？こここれはいつたい？」
「ふふふふふ♪」
外で食事して飲み物食べ物を買い込んで、ブラッドの隠れ家――――いったい全国にいくつ隠れ家を持っているんだ、
この普請道楽者は？――――に入るとブラッドは黒い革のコートを脱いだ。その下には白いシャツ下も黒革のパンツで、
酒やつまみを広げながらエリックがそのコートを借りていい？と着こんでこんなの履くと決まるかもと言って
持ち出したこれもやはり黒革のブーツなんか履いてみてサングラスでびしりと決めれば。
「すごいすごいカッコイイ！」
荷物を置いたテーブルセットのイスに座ったブラッドは、拍手しながらエリックの変身を見守った。どこから見てもハードなお兄さん。
こんな格好をして街を歩いた日には、そのあまりのセクシーなカッコよさに、ハメルンの笛の音が聞こえるかのように、
ふらふら後についていくものが絶えないこと請け合いだった。
「カッコイイ？」
サングラスをずらして顎を引いて、上目づかいで言われた日には、背筋をぞくぞくぞくぅっと来るものがあって、
ブラッドは困ってしまった。そういう趣味があるかどうかなんて、考えたこともなかったが、もしかして自分はお兄さまに
イケナイことをしてもらいたいクチだったのだろうか？と思ってしまうほどだった。
「ふふふふふ」
今日のエリックは、セクシー路線で行くことに決めたんだろうか？どっきんどっきんと激しく強く脈打つ心臓に手を置きながら
何になりきっているのかとりあえずサングラスの下からセクシーな視線を送りまくり、ワルイ魅力をふんだんに振りまくために
汗がだらだらしてきそうなほど扇情的にブラッドの顎を撫でたりなんかして。
そこまでなりきっているのか、いつのまにか手には黒革の指なし手袋なんかもしていたりして。
「エ、エリック……」
喉がすっかり干上がっていたので、ブラッドの声はかすれてひっくりかえっていた。
ああ美声が台無し、これじゃエリックはうっとりしてくれやしない！と思っていたら。
がしゃり。
「え？」
「ふふふふふ♪」
エリックは相変わらず楽しそうだった。
楽しそうにブラッドの腕を後ろにまわしてはめた手錠を持った。もちろん傷などつけないように、手錠の下にはサポーターをさせて。
「スタンダップ、プリーズ、ブラッド？」
そしてブラッドを立たせた。
「え？」
まだ状況がよく分かっていないブラッドは素直に立たされて、素直に押されるがままに歩き始めた。
どこへ連れて行かれるの？自分はどうなっちゃうの？という疑問は、荷物と一緒にテーブルに置いたまま。
「エリック？」
連れて行かれた先はベッドルームで、ブラッドはエリックに押されるがままにベッドにぼすんとダイブした。
「よいしょ、っと」
尻だけを高く掲げた格好になったブラッドの、浮いた腹の下に俵型のクッションを入れて、それから。
「エリッ、ク？」
「じっとしててハニー。イタいことは多分あんまりしないから」
多分あんまりってなにー！？それにどうしてそこだけ声が小さいのーっ！？
ブラッドが頭の中を疑問符でいっぱいにしている間もエリックはせっせと準備を進めていた。
まず部屋の電気を間接照明だけの薄暗い感じにして、それからオーディオを、ボリュームをしぼって流し始めた。
音楽はごく低く小さく、けだるげだった。常ならぬ状態にブラッドはすっかり昂ぶってしまっていた。だから、エリックが羽箒なんかを取り出して
ブラッドの背骨にそってつつーっと下ろしたときなんか、本当に感じてしまったのだった。
「あ……」
背骨の消失点はパンツに隠れていたので、エリックはその中にも羽箒をつっこんだ。
「どう？」
「あ……エリック……」
「それとも……こっちのほうがいい？」
そう言うとエリックは、乱暴にブラッドの尻をつかんだ。そのまま尻を揉みながら、腰骨、足の付け根それからフロントへと手を伸ばしていった。
「ブラッド？」
「……はい……」
「わたしは、怒ってるんだよ？」
「……はい……」
「昨夜のあの仕打ちにね」
「ハイ、ごめんなさい……あ……いい……」
「これが？……いやらしいね、ブラッド、前をもうこんなにして……」
そう言ってエリックはすでにテントを張り始めているブラッドの前をそっと撫ぜた。
「……っ」
ブラッドは歯を食いしばってその刺激に耐えた。
「ブラッド？我慢することはないんだよ？」
エリックは覆いかぶさるギリギリにブラッドに近づいて囁いた。ブラッドはふるふると頭を振った。
「ここも……こんなになってる……」
エリックは、髪の色と同色なので淡い色彩の胸毛をかきわけて、そのまんなかでぽつんと立ち上がっている部分を抓んだ。
「少し……つぶしてみようか……？」
「……っ……っ」
エリックはブラッドにもちゃんと聞こえるように、大きな音をたてながらパンツを下ろした。その下から白いブリーフが現れた。
ブラッドはなんだって今日に限って白を履いてしまったのだろうと思った。黒革を着るんだから、黒がふさわしいはずなのに……とそこまで考えて、
今朝着替えるときにエリックがそれを渡したからなのだと気がついた。するとつまり、その時からエリックは？
「……すごく……滲み出てるよ、ブラッド……」
エリックはブラッドの先走りですでにぐっしょりしている部分を、ブリーフごと握りしめた。
「………あっ、…ぅっ！」
「ぐしゅぐしゅだ……」
粘土をこねるように、エリックはブラッドをこねた。エリックの手の動きにブラッドは震えずにはいられなかった。
「ここも……こうして？」
エリックは羽箒でブラッドの尻を叩いた。
「あうっ！」
「それとも……ここを？」
「く……ぁっ」
それから羽箒の柄の部分で、ブラッドの尻の割れ目を強くなぞった。
「ここって……たまらないよねぇ」
ブラッドの耳元で、エリックはねっとりと囁いた。そのときにブラッドの耳に息を吹き込み、耳たぶを噛むようにすることは忘れずに。
「あ……あ……っ」
ブラッドは拘束されている、おもちゃのちゃちな手錠をがちゃつかせて身悶えた。
「ブラッド……」
エリックの声はいつしか、抑えきれない情欲にかすれ、すでに脱ぎさっていたコートの下の素肌で、ブラッドの背を愛撫していた。
「あ……あ……ブラッ…ドぉ……」
「エリック、エリック……！」
ブラッドも、触れた肌で、手の触れる場所でエリックの愛撫に応えた。
「エリック……頼む……出ちまう……」
「ダメ……まだ、ダ…メ……」
「エリッ…ク……」
エリックはクッションを蹴飛ばした。支えを失ってブラッドはどさりと倒れた。しかしすぐに倒れた頭の目の前にあった、エリックの屹立にかぶりついた。
「あ…ぁ…エリック……っ」
くちびるでしごき歯でしごき、舌を頬をフル回転させてエリックを味わった。
「あ……あ……ブラ…ッド……イ…ク……あぁ…っ」
いつもなら軽口を叩くブラッドにも、さすがに今日は余裕がなかった。
すでにエリックも自分もぱんぱんになって、今にも弾けそうになっていたからだった。
「………っ」
ブラッドの唾液と、エリックの先走りが伝って濡れそぼってひくついている後孔にも、ブラッドは夢中になってむしゃぶりついた。
「あう………あ、うっ……ぁ！」
エリックは必死の面持ちでシーツに?まっていた。そうしないと、どこかへ飛ばされそうな気がしたからだった。
「も……も……」
「エリック……」
ブラッドはてらてら光った口のまわりを舐めながら身を起こした。腕が不自由なままだったが、上はエリックに貪るようなキスをして、
下では挿入しづらそうに狙いを定めた。エリックの手がブラッドに添えられて事なきを得たが。
でなければきっと、なかなか入らずに癇癪のひとつも起こしていたことだろう。
「ブラッド……あ……ブラッド……」
エリックの手ではじめの道筋さえ示してもらえればあとはもう、馴染みの場所に、馴染み深いとても熱い、とろけそうな快楽へ向かって突き進むだけだった。
「ん……ん……」
ブラッドは手が使えないというハンデを感じさせずに腰を使ってエリックを攻め立てたし。
「ブラッド……あ……い、い……ああ、ぁ………」
エリックも肘を突いて上体を起き上がらせ、押されるままにずりさがるどころか、より深く味わうために身を進ませようとさえしていた。
「い……あ……」
「うわ……イき、そ……うっ」
「ダメ、ブラッド……もっと……、あ……ブラッド……」
エリックは固く目をつぶりブラッドの肩にすがりついた。
「……こんな、もんっ……」
ブラッドが手錠の鎖を引きちぎった。そのままエリックの腰をつかむと、猛然と挑みかかった。
「あ……ブラッド……イ、イ……あああっ！」
「エリック、エリック……」
ムーディーな照明も音楽も形無しだった。
「ブラッドォ……っ」
「エ、リック……っ」
お互いを貪ることしか頭にない人たちにとってはなにもかも。
「あーエリック、大丈夫？」
うんと濃く淹れたコーヒーをマグカップにどぼどぼ注ぎながらブラッドは訊ねた。
目のまわりには、寝不足ならなにやらの疲れがくっきりと出ていたが。
「ありがとブラッド……飛行機で寝るから」
テーブルになつきながらエリックは言った。まだなんだか、腰に力が入らなかった。
「食うだけは、食わないとな」
「そうだ、ね」
かといって固いもの油っこいものが喉を通るとは思えなかったので、テーブルの上にあるのは水とオレンジジュース、
それからありったけの果物と、トーストはちょっと、だったのでやわらかめのパンだった。
「……作れなくてごめん」
「いや、きっと食えないだろうし……」
泊めてもらうときは、宿代がわりにエリックが食事を作ることになっていた。もちろんその他のサービスもあったが。
「おかゆとかならなんとか……」
「でもあれちょっと似てるし……」
「そうだね……」
２人は、何に似ているのかについて考えるのをやめた。そのかわり、濃いコーヒーにどばどばミルクを注いだ。
「あー大丈夫か？ついコーヒー入れちまったけど」
「まずいかも。……ミルクにしておく」
「それがいいな。あっためてくるよ」
「お願いします……」
そして結局昨夜も、ものすごいことになってしまったのだった。
復活したブラッドと、意趣返しを果たしたエリックで、くんずほずれずは当たり前、乗っかるやらしゃぶりあうやらで、それはもう。
お互いの身体で知らないことなんか何もないね！というくらいに分かりあった。
「ほい、ミルク」
「ありがと」
俺も飲も、というブラッドと２人してしばらくホットミルクの湯気の中だった。
「でも……」
「うん？」
「昨夜のキミはステキだったよ、ハニー」
ブラッドがバスローブ姿で気障に決めて言ってみた。同じくバスローブ姿のエリックの髪はまだ２人一緒に浴びたシャワーで湿っていた。
「……ブラッドもね、ステキ、だった……」
赤くなって、それでもエリックは言った。
「エリックが俺にまたがって腰振ってくれたときなんて、どうしようかと思うくらいよかったしなぁ」
そのときのことを思い出してやに下がり、ぽわわーんとなりながらブラッドは言った。
「ブラッドが勢いのままに足を交差させたときはどうなるかと思ったけど、あれも、すごく、よかった」
一言ずつ区切りながら、エリック厳かにそう宣言した。
「そう？良かった」
ブラッドは、にっこり笑ってテーブルの下のエリックの足に足を絡めた。
「でも一昨日みたいなのはもうダメだからな。分かったな、ブラッド？」
エリックも負けじとブラッドの足指に指を挟みこむように絡ませながらそう言った。
最後のほうでは、ちょっとばかりえいっと力を込めて抓みながら。
「もちろんさ、エリック！キミがそう言うなら！……やっぱり昨夜のキミには敵わないし……」
ブラッドは性懲りもなく流し目をくれながら言った。しょぼしょぼした目のそれではとても、エリック以外の相手を悩殺出来そうにもなかったが。
「なんだそれ」
エリックは比較的刺激の少なそうなところでりんごを手にとって割った。ちょっと照れてぶっきらぼうに。
「……分かってるくせに、俺から言わせたいのかい、ハニー？」
「ブラッドちょっとそれ気持ち悪い」
「失敬失敬」
やり直し、とブラッドは手を伸ばしてエリックのりんごを持つ手を掴んだ。
「エリックのことを好き勝手に舐めまわして悶えさせるのも捨てがたくイイけど」
ブラッドはエリックに、半分に割ったりんごを手にぶつけられた。ブラッドは、ありがとうとそれを受け取るとがぶりと噛み付きつづきを言った。
「エリックに襲われたりかぶりついたりしてヤるほうが、ずっとずっと良かった……」
ブラッドはまた陶然としてそういった。
「あっそ」
そりゃ良かったね、とエリックは照れたり呆れたり食事したりと忙しかった。
うっとりブラッドをちらちら見なくてはならなかったし。
「また襲って、エリック♪」
「変態」
「エリック〜」
「気が向いたらね」
「うん、今度別のもやってみような、色々ベンキョウしておくよ♪」
「あんまりイタそうなのはヤダ」
「痛いんじゃなくて」
ブラッドは、エリックの手を取り目をひたと見据えて言った。まるでまた、口説かれてるみたいと思うとエリックは、
寝不足疲れ目からだけではなく、ちょっとくらっときた。
「気持ちよくなることをしよう――――２人で、一緒に」
「そんなことそんな真顔で言うから……」
「惚れ直した？」
「……バカ」
「な、エリック」
ブラッドは、エリックの取った手の指先にうやうやしくくちづけた。
「もう……」
「愛してるよ、エリック。エリックは？」
「……してなきゃ……」
「うん？」
「あんなことするわけないだろ！」
「エリック！」
ブラッドはテーブル越しに身を乗り出し照れるエリックを抱きしめた。それはもう、むぎゅーっと。
つまるところ。
「愛してるよ、エリック！」
「はいはい」
言ってるほうも言われているほうも嬉しそうでしあわせそうで。
「……愛してる、よ」
「ありがとう、やっぱりー？」
ちょっとドキドキしたし、嬉しかったよとブラッドが手を握りしめて言えば。
あんなじれじれはもうごめんだとエリックがむくれた。
つまるところ、いつもどおりの朝だった。
どーにもこーにも書きたくなってしまったのでおまけです。
前夜のエリック悶えまくりも捨てがたかったんですが、
こっちにしました。楽しそうにうんちゃらする２人です♪
いやー元気に楽しくやれれば、
それに越したことはありませんやね！（笑）