「……あ、……ラス、ティ……あ……ぁ……」
「エリック……エリッ、ク……」
昼だというのにエリックは実に熱くラスティの求めに答えていた。
いつもならこういった行為は、夜の帳が下りてからというのがエリックの希望だった。だが今日は違っていた。手を伸ばしたのはラスティのほうが先だったが、
いつもなら拒むエリックも、今日はラスティを受け入れていた。受け入れるどころかラスティのさらなる突きや律動を待ちわびて腰を
振ることもねだる言葉を口にすることもためらわなかった。
「ラス……あ、も……」
エリックの、シャワーを浴びたいという要望を受けて場所はバスルームだった。だが、ラスティの譲歩はそこまでだった。
それもいつものエリックなら拒んでもおかしくないようなことだったが、それも今日ばかりは違っていた。ラスティも圧倒されそうなほどに乱れていた。
「もう……？それとも、……もっとか……？」
なぁエリック、とラスティはエリックの目に浮かんだ涙を舐め、それから耳たぶをくわえながらそう尋ねた。
「もっと……ラスティ、もっ…と……あ…あ、あぁっ！」
エリックが身をくねらせているのは決して、ラスティから逃れようとしているのではなかった。
バスルームの壁に手をついて、後ろからエリックを穿っているラスティの腰から逃れるというよりはむしろ、じらしているようで、ラスティもまた、
追いつめきってしまいたい思いと、このままいつまでもこうしていたいような気もしていた。じらしながらじらされて、悶えながら悶えさせて、
どちらもこれ以上はないと思うほどの快楽を味わっていた。
「……それでこそ…エリックだ……」
ラスティは、我が意を得たりとばかりに笑うと、切なげに目を細めているエリックの耳から頬にかけてにゆっくりと
舌を這わせていった。それによって生じる動きにエリックは顔を赤らめながらうちふるえ、それでいてラスティのすべてをのがすまいと、
腰とエリックの内部は貪欲に蠢いていた。
ラスティはその動きに満足のため息を漏らすと、エリックの腰を掴んでより深く己を突き入れた。
「あああぁ――――っ！」
達するのを防ぐために、エリックはしっかりと立ち上がって痛いほど張りつめているものをしっかりつかんでいたし、
ラスティはエリックが放ってしまわないよう抑えながらも先端には、爪を埋め込むようにしてエリックをさらに悶えさせた。
「エリック……エリック……イイ………たまらない……」
「あ、ラス……あ……い、い…ぁ……い、い……」
いつもならもう何度も達していてしかるべきところを、放出を抑えることでお互いに、何度も何度もクライマックスのような感覚を味わっていた。
ラスティはエリックにもっていかれそうになるたびに引き抜きかけ、エリックに気の狂いそうな思いをさせていたし、
そのくせラスティが戻ってくると今度は、エリックがあらんかぎりの蠕動でもってラスティに歯を食いしばらせるの繰り返しだった。
「エリック……」
「ラス、ティ……あ……」
こんな時間にしているのには訳があった。
明日から旅行に行くことになっているのだ。
それがどちらか１人でのものなら、しばしの別れを惜しんでということもあるうるだろうが、旅行は２人で行くことになっていた。
しかし、それについてのラスティの理論武装は「旅行になんていったらしばらくゆっくり出来ないし」というものと「ここでするのもしばらくないし」
というものと「夜よりも今のうちのほうが、明日に響かないし」といったものだった。
２番３番の理由はともかく、１番目は本当に実現するのかあやしいものだったが、旅先の部屋では住み慣れた我が家とはまた違ったものになるだろうとは
思っていた。それはそれで、興趣をそそるものになるだろうと考えると、ラスティは楽しい想像が止まらなかったが。
よそのホテルにエリックと泊まるんだ、と考えただけで、股間が熱くなったラスティだった。
毎日一緒にいるのに、毎日同じベッドで休んでいるのに、それでもラスティはエリックとの旅行が嬉しかった。
あれほど夢中だったホテル経営のことも、ルーベンのアドバイスを入れて専門家にまかせたのも、エリックとの時間を少しでも増やしたいからだった。
表向きは、エリックに資金援助までしてもらったのを無駄にしたくないから、ということになっていたが。
シャワーはもう止めてあった。
それでも身体中には水滴が残っていたがそれももう、汗と区別がつかなくなっていた。
エリックはラスティの手や腕を甘噛みするついでに、その水分をすすっていたし、ラスティもエリックのうなじや背に流れ落ちる水滴と汗を一緒に吸い込んでいた。
接する場所すべてから、水音とも結合音ともつかないものが聞こえ、２人をより煽り立てていた。ラスティもエリックも、いいだけ煽られていた。
エリックはラスティの鋭く息を吸う音にも、ラスティはエリックの喘ぎ弾ませる息にもまた。
旅の仕度はもう、すっかり済んでいた。そうでなければさすがにエリックも、ラスティとこうなることを拒んだかもしれなかった。
エリックは明日からの旅行を楽しみにしていてとても弾んでいた。それを見ていたらなんだかこう。
もちろんラスティも旅行は楽しみだったし、エリックと一緒なのも嬉しかった。しかしなんだかエリックに置いていかれたような気がしたのは確かだった。
だからつい手が伸びたのだった。
エリックは拒まなかった。
ちょっと驚いたような顔をしただけだった。
ラスティがキスするために顔を寄せたら目を閉じたし、背中に手を回したらエリックも回し返してくれた。そのまま抱擁を交わし、
エリックの身体をソファに傾けてもエリックの目は澄んでいた。それを思い切り熱くにごらせてやりたいような、今すぐ手を引かなくてはならないような
気持ちになりながらもラスティは言ったのだった。エリックが欲しいと、今すぐに、ここで、と。するとエリックは、
明日には響かせたくないと答えたのだった。長時間の移動になるのだし、行った先で動けないなどということにはなりたくないと。
だからラスティは、夜ならまだしも、今のうちなら響くまい、と言ったのだった。そうしたらエリックは。
「……シャワーを浴びさせてくれるのなら……」
目を伏せて顔を赤らめ、手はしっかりとラスティにまわし、熱い鼓動を刻んでいるラスティのモノ同様、エリックのモノがすでに
充分なふくらみを見せ始めているのを知ってラスティに出来たことはというと、
一目散にエリックを抱きかかえてバスルームへと駆け込むことだった。
「ラ……ラースティ、も……、あ……ラ、ス、…ティ……ダ…メ…だ…ぁ……」
エリックの声がより切なげになっていた。それを聞いているラスティも、終わりが近づいてきていた。
さすがにいつまでも濡れたままバスルームでしているわけにもいくまいな、ということに気づいたのは、満足のいく時間を過ごした後で
２人同時にくしゃみをしたときだった。肩をすくめて笑いあって、それからもう１度キスをして、自分のことよりも相手をタオルにくるめることにのみ
意識がいって、キスを繰り返しながら囁きながらベッドルームへと移動した。
それから、どちらもゆすらなかったものだから、上になり下になりして相手のすべてを愛撫しあい
最後にはエリックが仰向けにしたラスティをまたぐことで決着がついた。
「ラスティ、ラス…ティ……」
ついた手をささえに、腰を浮かせながらゆらしながら、エリックはラスティをゆらして導いた。
「エリ……あ……エリ…ック……ぁ……も……」
たまらない、とラスティは何度も言った。エリックの腰を持って、時にゆさぶりながら、気紛れのように激しくエリックの奥を突きながら。
「エリッ…クぅ……あ……も……あ、……」
ラスティはもういつ終わってもおかしくない状態になっていた。
「……どうにか……あ……なっちま……エリック……」
目を覆いたかった。しかしそうすると、悩ましく身を躍らせているエリックが、感じながらもより高みを目指して狂おしい動きを見せているエリックを
見逃してしまうと思うとそれも出来なかった。ラスティは進退窮まったような気がしていた。他ならぬエリックによってその窮地は
もたらされているのだった。いつまでもこうしていたかったが、それが無理なことは分かっていた。
どちらもそれは分かっていた。
「ラス……あ、ラスティィ……」
「エ、リック……ぅ……」
終わっても動くことが出来ないことはよくあったが、今日もそうだった。
最初のうちの、ラスティ曰く『我慢がきかなかった』頃と違って今は、ラスティがことを長引かせたがる傾向にあったからだった。
より深くより長くよりエリックとのことを味わいたいと言って、エリックをいつも翻弄していた。
もちろんエリックも黙って翻弄されてばかりではなかったが。
「ラスティ……」
「う、ん…？」
ラスティのつんつん頭を形作る髪をつまむと、エリックは名残の息を吐いてうっとりと言った。
「その……」
「よかった？」
ラスティがにしゃりと笑って問えば、エリックも頬を赤らめながらもうなずいた。
「うん……ごめん……」
「何が？」
いきなり謝りだしたエリックに、ラスティはおかえし、とばかりに胸の毛を１本抓んでみせた。その感触がまた覚めやらぬさきほどまでのことを
思い出させるようで、エリックは小さな声を上げると懇願するような目を潤ませて、ラスティの我慢の限界値の鍛錬に一役買った。
「俺は、ものすごーくよかったけど？」
「いや、わたしもよかったがその……はしゃいでしまって……」
「明日から旅行だから？」
エリックがまた、はにかみながらうなずくものだから、ラスティはもうさすがに無理かなーと判断していたムスコと、それは本当なのかと
相談しなくてはならないかと思うほどだった。
「ラスティと一緒に行けるなんて嬉しくて……しかも公現節に……そう思ったらつい……」
「俺も嬉しいし楽しみだよ、エリックと一緒に行けるなんて」
「あ、あきれてないか……？」
「ないない全然ない。ところで何に？」
「その……あんな風にその……えっと……その……」
ラスティのあたたかくて嬉しくて、幸せでとろけそうだという視線に励まされてエリックは、伸び上がってラスティにキスをした。
「ラスティ……その……すごく、よかった……」
「だろ？」
「あ……え？まだ……出来る、の、か……？」
「うーんどうかなー、でもエリックには触りたい。感じる？」
「あ…ん…ラスティ、ここも……」
「ここ？それともこっち？」
「ラスティ、ここ、イタイ……」
「ここ？舐めてやろうか？」
「お願い……あ……ラスティ……あ……」
「エリック……やっぱあんた最高……」
公現節を、数日後に控えた昼さがりのことだった。
「ふ、ふふふふふ……」
それはトルゥアー男爵のロンドンの屋敷だった。
「パスポートも人を介して渡したし、ロンドンに来るということだったし、……楽しみだな」
あまり好きではなかったが、こういうときには足を組んでブランデーグラスを傾けるのがお約束だよな、と若き男爵は大振りなグラスを持っていた。
あいにくちょうどいいのが見当たらなかったので、ブランデーどころか金魚が飼えそうなシロモノだったが。
琥珀色の液体がはねて、ちゃぽ、という音をたてた。
「……早く家の者に来てもらおう……」
気がせくあまり、アメリカの勤め先からまっすぐにこの屋敷に来たので、いつもの生活を送るための準備が何も出来ていないのだった。
いつ来てもいいような最低限の掃除や手入れはされているが、それはとても、若き男爵が『居心地いい』と感じるレベルではなかった。
「まあいい。早く来るといいエリック。そのときがおまえの最後だラスティ・ライアン……」
ふ、ふははははははっ！と高笑いをする若き男爵の声は、遠く離れた屋敷の管理人夫婦の住居までとどいた。
「……男爵さまも早いとも身を固めなさるといいんだけどもねぇ」
「……まったくあのふらふらと腰の落ち着かないとこは誰に似なさったんだろうねぇ」
「……豆は食べられたっけ？もうむいちまったけど」
「……いざとなったら俺たちで食べればいいさ」
「……人間暇だとろくなことしないってこったね」
「……金がありすぎるのも考えものさねぇ」
若き男爵の笑い声が、ひろい屋敷うちにとどまっていたことは、けだし吉兆というべきだった。
冬なのでエロ、シリース！（笑）
閑居すると不善を為すのは何も
小人ばかりじゃないと思うんですが。
もしも書けましたら、男爵ＶＳラスティｉｎヨーロッパ
なんてのもやってみたいなぁと思っております。
『スミス夫妻』も終わってないのに
もうすぐ公現節だと思ったら我慢できなくなって（笑）。
ところでかのフルハタ警部補さんも
誕生日は公現節なんですね。一緒一緒♪