１月２月とイベントは多いけれど、そのなかでもかなり上位を占める、恋人たちの一大イベント
今年のバレンタインをどうする？と聞いたとき、ラスティのことだからまた何かやりたがるのかな旅行に行こうとか、
と思っていたのだった。だからそのラスティから。
「家でのんびりしようか。たまにはゆっくりしよう」
と言われたときは内心かなり驚いたのだった。
「そう？それもいいかもね」
笑ってそう答えはしたものの。
のんびり、ということだからこれといって何もしないかというとそうではなくて、家の中でやってみたい企画があるようだった。
「でも、ちょっとやってみたいことあるんだけど、いいかな？」
「いいよ。どんなの？」
ものすごい仮装をしたいとか、正気を疑うようなプレイは勘弁してほしかったが、
それだってまあ、家の中でならと思ってエリックは聞いた。
「うん。そんなとんでもないことはしないから、今度は俺にプロデュースさせてくれる？」
１２月の、ラスティの誕生日はエリックがプロデュースした。今度はラスティがそうしたいというのだった。
「いいよ、もちろん。手伝うことや準備があったらなんでも言って」
「ありがとう。何かあったら、頼むよ」
「うん」
そう言っていたのは、１月の半ばのことだった。
「だからってなぁ」
ごしごしごし。
「何か言ったか？」
あわあわあわ。
「正装してフルコースというのはよく聞くけど、風呂に入れるところからスターとってのはあんまり聞かないよなぁ」
「今聞いたじゃないか。シャワーやるぞ」
「あ、うん頼む」
目をつむって鼻ををつまんで下を向いたところにほどよい温度のシャワーが降り注いだ。
ラスティのホテルのペントハウス、２人の住居のバスルームでは、バレンタイン特別企画、自宅で正餐のための準備に
ラスティは余念がなかった。
早朝のコーヒーショップでのエリックのバイトとジョギングが終わって戻ると、ラスティが何もかも用意して待っていたのだった。
まずは風呂、それから正餐、そして……というのがごく大雑把なラスティのバレンタインのプランだった。
食事をするにしても早くて、そのあとの時間がえらく空いているのが気恥ずかしかったが、ラスティにプランを任せると言ったのは確かだし
何もそのあとすぐに寝室へというわけじゃないんだし、もしそうなっても嫌なわけじゃないし……とエリックは自分を納得させた。ちょうど走ってきた
ところで、シャワーは浴びたかったことだしと。
しかしそのシャワーには決まりがあった。
自分で自分のことを洗うべからず、という決まりが。
「かゆいところはございませんかー」
「ないでーす」
狭いわけではないがさすがに大の男が２人してバスタブにちんまり納まっていては窮屈だった。でもまあたまのことだからと
ラスティに背中を流させているエリックも相当甘い。
「失礼しまーす」
エリックを前に、ラスティはうしろから手を回してあわのついたスポンジでエリックを洗っていた。ごくまっとうに。
めずらしいこともあるもんだ、と思いつつエリックはラスティに身体を洗ってもらい、ラスティのこともあらってやった。いろいろとちょっと
照れくさい場所もあったが。
「ちょっと意外だったなぁ」
最後に身体を拭くのも相手まかせだったが、バスローブを着る前に気になるところは自分でごしごしやりながらエリックは言った。
やぶへびになるかも、とは思ったが言わずにはいられなかったのだ。別にそのまま突入してもかまわなかったし。
「何が？」
「本当に洗われただけなんで驚いてる」
「俺も驚いてる。洗うだけで済むなんて。枯れたかな？」
からから笑うラスティに、そういえばこういう可能性もあったんだということに気づいたエリックは、頬に手を当て言った。
「……魅力がなくなったのかも」
「ないない、それだけはない。太陽が南から昇ってもそれはないから」
さっき以上に笑いながら、さっき以上に真剣に、ラスティはエリックの杞憂を笑い飛ばした。
「ここでオオカミになるのもいいけどさ、そしたらせっかくの正装姿が拝めないだろ？」
「なるほど」
「俺の作ったフルコースをエリックが食べて！ほろ酔いになんかなっちゃって！そんでもってさらにムーディに夜を迎えて、そして！！」
「……分かったから早いとこ着替えようか……」
風邪引く前に、とエリックが言うと、おっとそれはいかん早く早くっ、と逆にラスティの方がエリックの背を押した。
バスルームを出るとそこには、本日の衣装が用意されていた。フルコースにふさわしくタキシードが２着。
さすがに服を着るのはめいめいだった。そのかわり、タイを結ぶのと髪を整えるのは互いに頼んだが。
「うん、カッコいい」
「ありがとう。ラスティもカッコいいよ」
バレンタインなんだから！とやたらと気合が入っているラスティだった。どうやら今回のコンセプトは、誰にも見せずにおめかししたエリックを１人占め！
のようだった。ずっとならともかく、たまの１日ラスティに１人占めされるのも、ラスティを１人占めするのなら、エリックも依存はなかった。
バレンタインのプレゼントも用意できているし、楽しいバレンタインになりそうだった。
「美味しい」
ラスティ製作ラスティ給仕の正餐がはじまった。
リビングのソファをはじによせて作ったスペースにテーブルとイスできちんとセッティングして。エリックがからむと、ラスティはより生活凝り性になるのだった。
なにしろ味覚がジャンクフードナイズされているので、少し心配だったエリックだが、美味しければジャンクでもスローでもフードはなんでも好きなラスティが、
エリックと自分のバレンタインのために精魂込めてこさえた料理はとても美味しかった。
「よかった」
最初の一口を運ぶと、エリックは思わず微笑んだ。にっこり笑って感想を言うと、ラスティもつられて笑った。
「これで安心して食える」
はやくもパンを割りながらラスティは言った。
「もしものことがあったらどうしようかと思ってたよ」
「もしものことって？」
「砂糖と塩を間違うとか、火が通りすぎてるとか生煮えだとか」
「そんなことないよ、美味しいよ」
「ならよかった」
最初の皿には生魚と野菜のサラダ仕立てだった。シャンパンはやめておこうということで、今日の飲み物はワインだった。
ワインなら大丈夫なのは、ローマでの共同生活で実証済みだった。どころかかなりいける口で、エリックを酔いつぶして
ほんのりしたところを楽しむのもいいなぁと不埒な期待をしていたアスティのほうが、逆に返り討ちにあいそうなこともあった。
シャンパンの飲みすぎで寝込んだ前科のあるエリックもそれに同意した。少しだけならとも思うし、祝いごとにはやはり泡の出るもののほうが
気分が出るんじゃないかとは思ったが、なにしろ炭酸飲料がダメで、場合によっては一口飲むと寝てしまった過去もあるので、無理せずやめにしておいた。
いくらなんでもまた寝入ってしまって、はりきっているラスティをがっかりさせたくはなかった。それに、ほんの一口飲むだけならボトル１本開けるのはもったいないし、
シャンパンをラスティにお願いして、自分はワインというのもなんだか淋しくて嫌だった。
そのあとも食事は順調に進んでいって、ワインも話も気持ちよく進んでいった。だからそれが起こったのは、
グリンピースのスープに肉料理とつづいて、最後のデザートの時だった。
「あ」
デザートのあとに出たコーヒーに添えられていたスプーンの柄が、ジャケットの袖に引っかかってしまったのだった。
エリックが声を出したときにはもう、スプーンは宇宙遊泳よろしく宙に舞っていて、スプーンはぽぉんと弧を描いて落ちていった。
「失礼」
これがもしレストランでの食事ならエリックもそのままにしておいたかもしれない。しかし今日の食事は正餐、とはいえ家でのことだったので、
ついかがみこんで拾おうとしてしまった。
「あ」
食事中に席を離れる無作法を思い出したのは、イスに座ったままでは手が届かなかったので、床にしゃがみこんで
気紛れなスプーンを拾い上げたときだった。スプーンは着地してから転がっていったようで、テーブルの下にまで遠征していた。
丸いテーブルに白いテーブルクロスの中に入り込んだエリックはまるでかくれんぼしているいたずらっこのようで、
イスに座っているラスティのくすくす笑いの気配がまた聞こえるものだから少しいたたまれなかった。
「早く出ておいで、エリック」
そしてまた、小さい子供に言うようなラスティの声に、エリックはますます小さくなった。
「エリィック？」
早く出ておいで、とラスティはわざわざ足を組んでエリックをつっついた。その靴先が頬のすぐそばををかすめたはずみにラスティのほうを見た、
のがいけなかった。
（あ……）
しゃがみこんでいるのだから、自然と目線は座っているラスティの腰のあたりになる。
今は足を組んでいるけれど、面白がって動かしているその腰や、布の向こうにあるものがこの前も、そして今晩も……と思ってしまったらダメだった。
もうとても、出られたものではなかった。少なくとも、こんなことで顔を赤くしている間は。
「エリック？」
いつまでも出てこないエリックに、もしや気分でも悪くなったかどこかにぶつけたかとラスティもテーブルクロスをめくってのぞきこんだ。そのために、
組んでいた足はほどかれ、より奥が見えるようになってしまった。エリックはいつもなら見ることもない眺めにすっかり気が動転してしまい、自分の腕を抱きしめるしかなかった。
「どうした？スプーン見つからないのか？それとも、どこかぶつけたか？」
のぞきこむラスティの作る空間だけが明るかった。ほの暗いテーブルの下で。
「ラスティ……」
思わず、といったふうに声が出た。そして、声のするほうへ向けた目は顔は、自然とすがるようなものになっていた。それを見て、
にこにこニヤニヤしていたラスティの顔が、一気に真面目なものに変わった。
「エリック」
そう呼ぶと、ラスティは真摯な瞳のままテーブルクロスを掻き分けて机下の住人になった。
「エリック……」
戸惑ってどうしたらいいのか分からずに、腕をつかむラスティの手に抗うような引き寄せるようなしぐさをしている間に、ラスティのキスが迫ってきた。
「ラ……」
ラスティは迫ってくると思っているうちにエリックに喰らいついていた。はじめから喰らいつくような深いキスだった。
「ん……ん………」
しかしエリックもすぐに、ラスティのキスする呼吸にあわせて応えはじめた。ラスティは狭い空間の中でさらにエリックを引き寄せると
すべての息ごと奪い取ろうというようなキスをした。ほのかにコーヒーの味のするキスを。
「ごめ……ごめ、ん…ラス…ティ……」
キスが終わってもラスティはおさまらず、逃げ惑うように顔を背けようとするエリックの頬に狂おしくくちづけていた。
「な、にが？」
もちろんエリックにそんなつもりはなく、ただ口が自由になっているあいだに言いたいことがあるだけだった。
「ごめ……まだ食事、終わって、な…い……のに……」
エリックの目元はすっかり赤らんでいた。
くちびるはわなないて、抱き寄せた腰はもうふるえていた。欲情しているしるしだった。
ラスティもそれが分かったからこそ弾よりも早くモードを切り替えたのだった。恋人と食事を楽しむモードから、恋人とより深く接触を楽しむモードへと。
「もう終わったよ」
泣きべそをかかんばかりになって言うエリックがかわいくて、もうどうしてやろうかと思いながら頬にぶちゅぶちゅと音がしそうなキスをした。エリックは首をふった。
「だって……せっかくラスティが、楽しみに……」
放っておくとこれは本当に泣き出すかも、とラスティは思った。
エリックの口はもうえぐえぐとわなないていた。
「食事のあとのこれも楽しみだったよ」
「でも……」
「ここでしていい、エリック？」
ラスティがそう言うと、エリックはやっと笑った。
「ここで？頭ぶつけちゃうよ」
「だいじょ……いて」
大丈夫、と言おうとしたまさにその時にラスティのいがぐり頭がテーブルにぶつかって、テーブルの上に置かれたままのカップのがちゃつく音がした。
一瞬目を見合わせて、それから笑った。２人して。
「やっぱりここはやめにしておこうか」
「うん」
「そのほうがよさそうだ」
エリックのことも抱っこできないし、と言うとエリックは小さい小さい声で、バカと呟いたのだった。
「あ……あ……ラス……ティ、あっあっあぁ！」
皺になるよ、つくかもしれないしと言ったらかまわないからとジャケットの合わせにすがりついたのはエリックだった。
「エリック……エリック……っ」
ベッドルームまで行くのも待ってられない今すぐ欲しい、と言ってラスティをソファに座らせたのもエリックだった。
「ラスティ、あ……ラス、ティ……っっ」
ベルトをはずしてズボンの前を開くやいなやエリックはラスティを口に含んだ。今夜はしっぽりしっかりとね♪とは言っておいたがそれはあくまで心構えしておいてね、
ガンバルからというラスティの意思表示で、エリックがこんなに準備万端にして滾っていたとは知らなかった。もしかしたら着替えたときからずっとだったんだろうか？
それとも身体を洗っていたときから？もしかして、今日という日を迎えたときからずっと？
ずっとエリックはラスティとこうなるのを待っていたのだろうか。
エリックよりもラスティのほうが限界が来るのが早くて、くらくらくるのもラスティのほうが早い。それはエリックが、
ラスティのことを欲しがっていないとかこれにあまり興味がないということでは決してなくて、ベッドでのエリックは最高の恋人であることはラスティもよーく知っていた。
でもこんな風に、エリックのほうが先にダメになって、欲しがって、ラスティを押し倒すような真似をするのは珍しかった。
なにしろいつもは、そんなことをする必要がないくらい頻繁に、ラスティのほうからエリックを求めていたので。
バレンタインのプレゼント、ラスティからエリックに贈ったのはカフスボタンだった。買ったものより喜んでくれるだろうと、彫金をやっている友達に教えてもらって作ったものだった。
予想通り、エリックはとても喜んでくれて、さっそく今日のシャツにつけてくれていた。今、そのシャツはもうカフスでとめられた袖口でわだかまっているだけで、
ソファに押しつけて横にしたラスティの上で艶めかしく舞っているエリックのきれいなアクセントになっていた。あとは足元に脱ぎそこねたズボンが、
片足にまとわりついているだけだった。
ラスティのタキシードははというと、これはもう出せるものならクリーニング確実といった感じだった。なにしろジャケットとシャツは前を肌蹴て肩にひっかけているだけ
というありさまだったし、ズボンと来た日には脱ぐ暇もなく前を開けているだけだった。
ラスティもかなり急いでいたが、なによりエリックが待てなかった。
ベッドに行くのも待てないし、ラスティが服を脱ぐのも待てないと言って立ったままはじめようとするから、せめてソファで……と言いかけたら押し倒された。
そのままエリックはラスティにかぶりついておいあげると、なんとラスティの助けを借りずに自分で後孔にローションをぬってくつろげると、
息もつかせずラスティに襲いかかったのだった。エリックに押し倒されたり襲われたりするのってステキ、とラスティをうっとりさせながら。
そうして今も貪欲にラスティを貪り食うべく腰をゆらめかせ引き絞っているのだった。
「エ、リック……」
ラスティは抓んで欲しそうに屹立しているエリックの胸の赤い飾りに手を伸ばした。
「あ……ひ、ぃっ……」
鋭く息を飲むエリックの反応の好感触を得て、ラスティは伸び上がってエリックを舐めた。
「あ……くっ、つぁ……あ……」
ぺろぺろと、まるでキャンデーのように舐めねぶるとエリックは、すでに振り乱しきっていた髪から汗を飛び散らせながら、さらにうちふるった。
「あ……ぁ……ラスティ……あっ……」
「エリック、イキそう？」
「あ……ラス、ティ…ィ……」
こくこくうなずいているエリックはラスティが言うように達しそうでそうしているのか、それとも新しい体勢からエリックの腰をつかみ、
さらに激しく突き上げ始めたラスティの動きに翻弄されているのか分からなかった。
エリック本人にもはっきり分からないのかもしれなかった。
「エリック？」
「ラスティ……あ、……ラス、ティ……」
エリックはうるんだ瞳でラスティにひたと見据えると、見上げるラスティの頬をとってキスをした。
「愛してる……」
それはちょっと、フェイントだよなぁ、とラスティが思う間もなかった。いっそう激しく腰を使い始めたエリックと、
その言葉によってまたいちだんと体積を増したラスティに悶えながら、エリックがのぼりつめようとしていたからだった。
「ラスティ……ラスティ……イ、…ク……」
「うん、俺も……」
どこかに飛ばされないように、お互いに抱きしめあってしっかりと。
言葉もない、何もいらない世界へと、手を取り合ってダイブしたのだった。
いたずらに空を飛んだ、あのスプーンのように高く。
「は……」
「んにゃむにゃ……」
精を放ったあとのけだるさが部屋を支配していた。
指をあげるのも億劫だったので、ましてや自分にかぶさる身体をどうかするなど論外だった。
どうかしたいとも思わなかったが。
エリックに覆いかぶさっているラスティの息が肌をくすぐっていた。ソファで１回して、少しは落ち着いただろうからベッドへ移動しようとしているときにきざしてもう１回、
今度こそ立ったままでやってしまった。壁にがんがんぶつかってしまったし、重いんじゃないかラスティごめんと思いながらも、尻をラスティに持ってもらって
突き上げられるのはものすごく良かった。あれが癖になったらどうしようというくらいに。思い出したら泣けてきそうなくらいに。
いつもと違うことをすると高ぶるもんだなぁとエリックは思っていた。今はまだ、いつになく積極的だったことに対するアレコレが、
疲労のために浮かびきってはいなかった。
それからやっともつれあうようにしてベッドまでやってきて、さすがに一息ついているところだった。
なんだかもう、エリックはおなかいっぱいといった感じだった。
「ど……しちゃったんだろ……」
「なにがぁ？」
まだその体勢から動けなかった。
ベッドに仰向けになっていて、上にはラスティが寝そべっていて、何か飲みたいと思うものの、腰に力が入らなかった。
もしかしたら立てないかもしれなかった。なにしろ今日は信じられない、思い出したら顔が赤らみそうなことばかりをしでかしてしまったので。
「なんか、もう……信じられない、どうしちゃったんだろ……」
「積極的なエリックもステキだったよ」
エリックの胸毛をくりくりといじりながらラスティは囁いた。
「どうしちゃったんだろ……何か悪いものでも食べた、の、かな？」
「俺も同じもの食ったぜ」
「じゃあなにか、……媚薬とかそういう香りとか……」
「エリックだけ？」
ラスティは笑いながらそう言った。
「そっか……どうしたんだろ……」
「そういうときだってあるだろ、発情するときも」
「発情……？」
「春も近いし。最近猫うるさいよ」
「そうなのか……？」
「そうそう、俺があんまり魅力的だから、ってのもある」
「それはあるかも……」
三分の一くらいは冗談で言ったことに、エリックが素直に納得してくれたので、かえってラスティは照れた。
撫ぜていたラスティの背に、エリックが爪を立てるようにして抱きしめたが気にならなかった。
ちょっと苦しかったがラスティは、されるがままになっていた。照れくさいときには、そのくらいがちょうどよかった。
「こっちは平気？触らなくても、イケてたみたいだけど」
ラスティがエリック自身に触れるとエリックは、うっとりと目を細めた。そのままラスティの手によってこねられるままになっていると、
そこからまた這い上がってくるものがあって、エリックはくちびるを引き結んだ。いつの間にかラスティの手に、押しつけるようになりながら、
逃げたいようでもあり、混乱するままエリックの息は熱くなるばかりだった。
「あ……ラスティ……」
「うん？」
「ラスティ……」
愛しいとか感じるとかもっととか気持ちいいとか好きで好きでたまらないとか、そういう気持ちのすべてを名前を呼ぶことで代用した。
「うん……エリック、愛してる、よ……」
ラスティにもそれは通じたようだった。ますます照れているようでもあったが。
そういえばまだ一度も、『ハッピーバレンタイン』と言っていないような？ということに気づいたのは、出来るかどうかはともかくとしてと、
もう一度エリックの足を抱えあげたときだった。
「エリック……バレンタインおめでとう……」
キスの雨を降らせながらそう呟くと、目を閉じてラスティの愛撫受けていたエリックも答えて言った。
「あ……おめで、と……ラスティ、ラス、ティ……そ……あ……おめ……ああっ！」
我慢できなくなったラスティはがっつくようにエリックをつっついて、それで奪った言葉はまたあとでゆっくりと。
エリックからのプレゼントのエプロンをしめて、明日の朝食を作るときにでも。
バレンタインらぶらぶの巻〜。
書いてみたらエリック積極的の巻〜になりました。
エリックにも、熱く滾るときはある、ということで。
恋人暮らしが長くなってくれば、安心して求めるようにもなると思うので〜。
役得だな！おいラスティ！！もうエリック泣かすなよ！
きっと一生言われるだろうけど
キミにはエリックをしあわせにする義務と権利と使命があるのでな♪
どなたさんにもハッピーバレンタイン！