「……アキレス、ひとつ聞きたいことがあるんだが」
「聞こう」
「もし……わたしが了承したら、本当にパトロクロスに、その……見せるつもりだったのか？」
「そうだが？」
かえってきょとんとした顔をされて、ヘクトルの方ががっくりきた。そういう奴だと、分かっていたはずなのに。
「どうしたヘクトル？」
アキレスはヘクトルの、脱がすもへったくれもない部屋着の前から鼻面をつっこむようにしていた。
くんくんと、まるで犬のようだな、と思いながらもヘクトルはアキレスの後ろ髪を梳いていた。
「いや……たいした従弟馬鹿だなと思ってな……」
ちょっと眩暈がするような気がしてヘクトルは額を押えた。
「なんだそれは」
「君はわたしがパリスのことを言うととやかく言うが、わたしから見ればそう変わりはあるまいよということだ」
「パリスを引き合いに出すな！」
アキレスにとってパリスは、さまざまな意味で不倶戴天の敵なのだった。
「だったらいくら従弟といえどこんなところを見せようなどと言うな！」
「パリスとパトロクロスを比べるな！！」
「わたしから見れば５０歩１００歩だ！！」
「なんだとっ！」
「……つまりだから話を整理しよう、ヘクトル」
ぜいぜいと、肩で息をしながらアキレスは言った。
ついでに言うと、激昂するときの常でヘクトルの胸倉を掴んでしまい。幸か不幸かますますヘクトルの衣服をはげさせてしまったアキレスだった。
「……そ、そうだな、アキレス……」
ヘクトルも、アキレスの髪を掴んだりしたものだから、本人は見えないだろうがアキレスの髪はぼさぼさになっていた。それを
さりげなく撫でて直しながらヘクトルも頷いた。
「パトロクロスが見てみたいと言ったのが気に入らなかったのか？」
「違う。君がそれを了承したことに驚いたんだ」
「別に了承したわけではないぞ。あんたの意見を聞いただけだ」
「聞く以前に断って欲しかったよアキレス……」
「そうだったのか？まずはあんたの気持ちを聞いてからかと思ったんだが」
「その気持ちはありがたいが、物事には常に例外というものがある。わたしはその……こういったことをあからさまにはしたくないんだ。例え身内でも」
「それはそうだな、もったいない」
「そういうことではなくてだな……」
座っているはずなのに、座り眩みの止まらないヘクトルだった。
「頭か？痛むのか？」
見ても分かるわけでもないのに、アキレスはヘクトルの押えている前頭部を覗き込んだ。
「いやちょっと……考え事をするときの癖のひとつだよ、アキレス」
だから心配しなくても大丈夫だ、とヘクトルはアキレスの額にくちづけた。
「そうか？ならいいんだが……」
そう言いつつ心配なのだろう、抱きしめることにしたアキレスはたいそう大事にヘクトルに触れた。
「それに、見せたからといってどうなるものでもないだろう？これはパトロクロスとエウドロスの問題だ」
「問題だがしかし、俺にでも聞かねば、パトロクロスも聞く相手がいないだろう？」
「それは確かに。しかし……」
「結局はあの２人で修練を積むしかあるまいな。そもそも俺たちだってこうなるまでには色々あった」
とても一言や二言では片付かないような、それはもうたくさんのことが色々と。
「色々とあったな、アキレス」
「そうとも！色々だ！」
２人は顔を見合わせてくすくすと笑いあった。
どちらからともなく抱きしめあい、くちびるを各々の肌に寄せ合った。
「まあその……あちらも上手くいくといいのだがな………あ……」
痕がつくのではないかというほどの強さで、アキレスがヘクトルの肌を吸った。
「行くさ。なにしろ互いに思いあっている。………歯を立てていいか？」
ぷっくりと立ち上がった胸の飾りを前に、喉を鳴らしながらアキレスは問うた。
「どうぞ、アキレス……それからここも……」
ヘクトルはアキレスの手を取って、背筋をたどらせた。
「順番に行こう。手は２本しかないし、口もひとつしかない。残念なことにな」
にやりと笑って、アキレスはヘクトルに息を吹きかけた。その刺激だけでヘクトルの肌が漣だった。
「それ以上あったら………っあ……」
予告通りに、アキレスはヘクトルに歯を当てた。しかしそれはあくまでも甘美なものを呼び起こす予兆にすぎなかった。
「あったら？」
アキレスはヘクトルの背をなぞっていた手で尻を揉み、長い指をその裂け目の奥へとしのばせていった。
「身が持たない……ああ…っ…あ………」
アキレスを抱くヘクトルの腕に力がこもった。それはヘクトルが激しく感じているという証だったからアキレスは目を細めた。
「今は？身が持ちそうか、ヘクトル？」
アキレスは自ら濡らした指でヘクトルの後庭に分け入った。
「持たない……アキ…レス……たな、い……あ」
「それなら、これだけでもいいか」
アキレスは不敵に笑った。身を捩るヘクトルに、こよない興奮を味わいながら。
「も…も、う……も…うアキレス……」
「まだだ」
「いい、から……っやくっ」
「まだ……待て、ヘクトル」
「ああ……うっ……」
鼻を、鳴らすようにしてアキレスの起こす波をやり過ごしながら、ヘクトルはたまらずに喘いだ。
アキレスのものもすでに、ヘクトルに高ぶらされ、ヘクトルの足に手によって弄られ、すっかり準備は整っていた。
「ヘクトル……足を……もう少し……」
「……」
言われるままにヘクトルは足を左右に開いた。そうすることにもうあまり抵抗は感じなかった。そうしなくてはならないことが、分かっているからだった。
誰に見せるでもないはずだった場所のすべてを、アキレスに曝け出していることへの羞恥は、今も変わらずにあったけれども。
「いいか？行くぞ……」
足を抱えて、自身に手を添えて、アキレスはいつも出来る限りとゆっくりとそこにあてがい身を進めた。
それを見ているのが好きだった。自分はなるべく力を抜いて、よけいな力が入らないよう腹に力を入れないよう気をつけて。
そしてアキレスを見ていた。いつもいつも。
額に汗して、歯を食いしばるようにして、眉間に皺を寄せて。
そんなにまでしてヘクトルを傷つけないように、そうそうに持っていかれないようにと奮起するアキレスを見ているのが
なんという特権なのだろうといつも思っていた。半ばうっとりと微笑みながら。だからヘクトルは知らなかった。
アキレスにそれほどの努力を強いているのが、他ならぬヘクトルのその慈愛に満ちた微笑みのせいだなどとは。
（く……そ……がんばれ俺！）
（アキレスかわいいなぁ……と、違うことを考えていないと大変なことになりそうだな。えーとパトロクロスとエウドロスも上手くいくといいなぁ。
……あ……あ、駄目だ……そんな、あ……あ……アキレス！あ、ああっ！）
努力は常に、しないよりはしたほうがいい。特に。
相手を思ってのことならば、なおさら。
アキヘクだけ何故に成人指定になるのか？
愛の差だという理由は嫌なので
当人同士の仲の深さの差、ということにしようそうしよう！（笑）
下手に隠そう秘めようとするよりも、出来ることならオープンに、ということで（笑）。
３つの話のうち最初の１つを書いて
「でもこれその後のそれぞれのカップルのことも気になるなぁ」と思って書いて。
でもひとつにまとめるとバランスが悪いので３つに枝分かれ。
そういう訳でまとめてＵＰしました。
数だけ見ると、なんだかすごいみたいね♪（笑）