「サンタの出前でーす！」
そっちに言っていい？今一人？と電話で来訪予告をするものだから、珍しいこともあるもんだと思いつつ、退屈していたところだからどうぞどうぞと答えた。
「…………エリッ、ク？何、……」
だから、ぴんぽーん♪とドアチャイムが来客を告げる前に、トレーラーハウスの中をちょっとばかり取り繕った。って言ったって、放りっぱなしのものをまとめなおしたり隅に寄せたりするくらいだが。とりあえず、座る場所の確保から。
「お邪魔しまーす！」
現れたのは確かに、共演者にして友人のエリックだったのだが、だったのだが！
「は…はぁ……」
格好が普通じゃなかった、のだ。まったくちっとも！
「ブラッドー何か飲むものクダサーイ」
勝手知ったるサンタさんは、どっかとソファにお座りあそばして。
しかも足なんか組んじゃったりして。
いつものジーンズなら問題はなかった。問題は何もなかった。いつもの、Ｔシャツにジーンズという格好ならば！
「……な、んでそんなもの着てるんだ、エリック？」
「今はサンタさんでーす！」
セパレートミニスカサンタはそう言った。今ならもれなくウィンクつき！
その場で膝をつかないようにするのが精一杯だった。真っ昼間だったがビールを出した。飲まなきゃやってられっか！こんなジョーク！！
「で、何なのサンタさん、今日はエイプリルフールでもハロウィンでもないぜ？」
そういえば確かハロウィンには、おばけのコスプレを嬉々としてやっていたっけなぁと思い出した。
オーストラリア人の血には、仮装やジョーク成分がたくさん混じっているんだっけ？と、オーストラリア人の友人知人の顔を思い出した。……流れているかもしれない。人のことは言えないが。知らなかった。ジョークというのは、するのは楽しいが、されるとこんな風に途方に暮れることもあるんだってことを。いい勉強になった、次のエイプリルフールに生かそう。ジョークはやはり、カラッと笑えないと！
「だからサンタだから、クリスマスだよブラッド。まさかもう耄碌しちゃったの？そりゃ過ぎちゃったけど、まだ１２月だよ？ハロウィンは終わったし、エイプリルフールにはまだ遠いよ？」
「……全部知ってるからご心配なく……」
ああ駄目だ。まだ笑えない。修行が足りんな、修行が。パイ＝メイのところにでも弟子入りをすべきなのか？
「もっと早くに来られたらよかったんだけどね。クリスマスはやはり家族優先だったし、そもそも休みもらって帰ってたし」
「そりゃそうだ」
しかも１本目のビールは飲み干しそうだ。これはやはり２本目突入か？立ち上がりかけたら止められた。
「そういう訳で大人のところに来るのは遅くなったんだ」
……あんまり見上げないでほしいんだけども。その目でその顔つきで。俺を。「そ、それはどうも……で、サンタさんは何しに来たのかな？息抜き？」
いやいや違うよ、とエリックは首を振った。サンタさんの帽子についているポンポンが左右に振られて残像を作る。
「浮気しに」
「……………………はいぃっ！？」
「そう思ってほら、下履いてないんだ」
古代ギリシャの甲冑も真っ青なミニスカートをぺろりとめくり、現れたのは――――。
「ブラッド？ブラッド、大丈夫？」
「だ、だいじょうぶ……いやちょっと……」
鼻は大丈夫だろうか？鼻の粘膜は、特に強くもないが弱くもないはずだったが。
それでも、みっともなくゆるんでしまっているだろう口元は隠した。人間誰しも、秘密にしておきたいことのひとつやふたつやみっつやよっつ（ずっとつづく）はある！
「いやもうサンタさんからっけつでさ、古典的だけど『プレゼントはア・タ・シ♪』っていうのもまたいいかな……本当に大丈夫、ブラッド？」
「だ、だめかもしれない……」
「よしよし」
頭を撫でられた。こんな時でも気持ちいい。「ど、どうしてサンタさん御自らプレゼントになるノ、エリック……？」
「さて？そうしてもいいと思ったからじゃないかな？それともいらない？」
いらないかと聞かれれば、確かにいるが、いやしかし！人として！しかもこれは紛れもなく！！
「面白いかと思ったんだけどな〜」
「だからその格好なのか……」
スカートの裾をつまみながら言うエリックに、思わず突っ込みのひとつも出てしまうというものだ。
そもそもその格好でここまで来たのか。いくら隣だからって！
「ストレッチ素材だから伸びるんだ。もちろん元は女物だけど。ふつうのサンタルックよりは面白いかと思って。それにほら、ブラッドよく言ってたろ、衣装のことで。仕方ないとはいえ、アンダー履くのはちょっとって」
「だから履いてないのか……？」
「そう」
明朗快活に言わないでもらいたかったよ……もともと少なかった立ち上がる気力が、今ので根こそぎもっていかれてしまったようだった。
「悪かったよ、おふざけが過ぎたな。それじゃあ帰るから。ビールご馳走さま」
と言って立ち上がったエリックの脛に膝に、がっぷりとしがみついた。
「ブラッド？これじゃ歩けないよ？」
「…………行かないでくれ」
「よしよし」
また頭を撫でられた。「お兄ちゃんのくせにかわいいなぁ、ブラッドは」
「弟のくせにどうしてそんなにやさしくするのがうまいんだ」
「そりゃあいいお手本がいたからだよ」
エリックはもう１回ソファに腰掛けた。閉じようとしていない膝頭の奥の暗がりが、想像力を刺激してやまなかった。
「このコスチュームはどうしたんだ？」
「友達からのシャレプレゼント。これがあったから思いついたんだ」
「誰だか知らないがありがとう……」
そう言うと、エリックは笑った。今度会ったら伝えておくよと。
おそるおそる、ソファに座るエリックに手を伸ばした。
「触っても……いいか？」
「どうぞ。と、いうか触りもしないのはごめんだよ。妙なプレイもね」
「なんだそりゃ。変なポルノビデオの見すぎ……」
脱がせるのも畏れ多くて、最初はまず布越しに触れた。豊かな胸の、先端の尖りを少し。
「腹が立つくらい……」
「うん？」
「君が好きだよ、ブラッド」
「ならこっちは、腹が立ちすぎて頭がおかしくなりそうだ」
「この負けず嫌い」
「そっちこそ」
男の胸を舐める日が来るとは思わなかった。
しかも嬉しくて楽しくて仕方ないときてる。
「あ……そこ……って……」
ちゅ、と吸いつくようにキスすると、エリックの乳首ごと胸はぴくぴく震えていた。
「感じ…るもん、だ…な……」
「感じるか？」
「い…い……気持ちい、い……あ……っ」
ちゅうちゅうやりながらも、もう片方の手はエリックのスカートの裾から忍び込ませていた。見ることが出来ないのは残念だったが、こっちをどうにかしていないと、そう簡単に気持ち良くはならないだろう。それに、ここの反応がどうかで、気持ちがある程度分かる喘いでいるのは演技できても、ここまでは出来まい。
――――反応していた。少なくとも、手でされるのは気持ちいいわけだ。
演技でもいいからもっと、あの腰の砕けそうな声を聞かせて欲しかった。
そんなことを言おうものなら、張り倒されるかもしれなかったが。
「………んあっ……っ」
そうそうにエリックに吐精させた。のけぞっていた喉が、さらにかくりと晒された。その喉をかき抱くようにして満足の息を漏らす。とりあえず、この手でエリックを達しさせて、それを見られたんだから。自分の手で、エリックを喘がせたんだから。「あ……あ、あ……っ」
びくんびくんと、手の中のエリックは何度も波打つように震えていた。それを持つ手の震えが誤魔化せてちょうどよかった。
エリックの喉と言わず、胸元と言わず、今のうちにとキスの雨を降らせた。
早く早く、エリックが、正気に帰ってしまう前に。身支度を始めたくなる前に。
「あ――――ブラッド、じょう、ずぅ……」
「それはどうも……」
誰の何と比べて上手なんだろう？わりとこの、ほけほけさんはおもしろいことを言うから、相手は人とは限らない。
「あ……ごめん」
何が？と聞き返す前に、エリックはごそごそとしはじめた。
「一応こんなのもあるんだ」
そう言って取り出したのは小さな箱だった。プレゼント仕様のそれは、ピンクのストライプの包装紙に、赤いリボンでラッピングされていた。
「プレゼントあるんじゃ……」
「いやでもこれは、俺も使うし」
開けてみて、というからリボンを引っ張った。エリックから手を離さなくてはならないのが、未練がましいが名残惜しかった。「…………エリック、さん？」
「はい？」
「これはいったい……」
「ローション。いるって話だよ」
「いるってナニに……」
「アナルセックスに」
「スるんですか……」
「ブラッドはしたくない？」
「………ビ、ビミョウ……」
「したい？されたい？」
「ちょ、ちょっと待って……おねがい……」
「はいはい」
嫌な汗がタラタラと流れていた。なんだってこんな展開になるんだ？これはもしかして夢なのか？そうなのか？そうかもしれない！
「何やってるの、ブラッド？」
「いや……もしかしたら夢かもしれないと思って……痛いな」
「そりゃほっぺたをそんなに思い切りよくつねればね」
サンタさんがキスしてあげようと本当にされた。それにドキドキするんだから相当に末期だ。末期バンザイ！
ゴリゴリするとかイタイとか、そのあとは大変だった。
大変だろうそりゃあ、挿れてるこっちも痛かった。最初は。
ローションをありったけ使う勢いだったから、あそこら辺もソファの上もどろどろのでろでろだったし、それでもなかなか上手いこと収められなかったしさすがにそこまでは用意のなかったゴムを求めて中断する羽目になってしまったし、それでも予備があったのでほっとしたし、しまいにはエリックがなんだかちょっと……とか言い出すし、どうにも止まらなくなってこっちもかくかく揺らし始めてしまうしそしたらエリックが……！ああ、サンタさんはステキだった！！
「……バテた……」
「お、お疲れ様でした……」
ソファが長めなので、そこにうつ伏せてのべっと横になっているエリックの、髪を撫で、背中を撫で、幸せを撫で。
満足した猫のの気分を味わっていた。多分そんな顔をしていると思う。おそらく、きっと。
「結構体力消耗するぞ、これは……」
「そ、そうか？」
「明日甲冑を着るとつらいぞきっと……」
「そ、そうなのか？」
「あれは胸が擦れるから……」
「そ、そうかっ」
こっちが赤くなってどうする？張本人のクセに！
でもとたんに、今は隠れているエリックのあっちこっちを思い出してしまって、ますます顔がほてった。「今度またマッサージしてブラッド……」
「お安い御用だ、けど……今しようか？」
あんな格好やこんな格好をさせてしまったので、結構にあちこちあれなんじゃないかと思って聞いただけだった。誓って他意はなかった。
「今は駄目……」
「そうか？」
どれどれ、と肩から肩甲骨にかけてちょっと手を置いてみると。
「……っ！！」
エリックの全身に、激しい震えが走るのが分かった。
「あ……」
「分かった？今は駄目。……絶対に駄目デス」
「はい……」
そんな親切なサンタさんに、毛布の一枚かけてやらないのはいかんのではないかと思いいたって取りに立ち上がった。
「ブラッド……」
うつぶせたまま顔を見せないから、呼ぶ声はくぐもっていた。聞こうと思って自然頭を下げた。
「うん？」
「サンタのプレゼントは……気に入った？」「今までで１番」
触らないように少し離して、手を当てがった。耳元で囁くように答えたのには、……少し他意があった。
「嘘つき……」
「役者だからね」
なだらかな背のライン、それにつづく腰と、もりあがった尻と、その奥深くにはローションでベタベタのいとしい性器。
筋肉で引き締まった脚に、サンダルの似合う足。かわいい巻き毛にかわいい性格、声、仕草、話し方笑い方。
エリックの全部。
「ブラッドさん……」
「うん？」
「このことはくれぐれもご内聞に……」
「どっかの考えなしの第２王子のような真似はしないよ」
安心して、と髪にそっとくちづけた。
「毛布持ってくるから、一眠りするといい。その間に夕食作るよ。でも出来たらシャワー浴びてからの方がいい……サンタさん」
「サンタさん眠い……」
「その格好で寝たら愉快なラッピングするぞ」
「オーランドには送らないでくれ……」
「贈らないよ」
誰にもね、と言って、今度こそ立ち上がった。
「ありがとう、サンタさん」
どういたしまして、と返事があったのが最後の言葉で、あとはただ寝息に取って代わられていた。
本当にありがとう。
某ずきこさんのサイトの襟っくサンタクロースを見てからずーっと
ワキワキしていたものを書けて幸せデス♪
いつまでクリスマスが続くのかって？
そりゃもちろん気の済むまでですよ！（笑）
それに、大人には仕事やイロイロと事情があるのですよっ！
遅れクリスマスバンザイ！ってことでひとつ！（笑）
それにしても、ヘタレ攻×上手受って好きなパターンだけど
なんだか豆藻テイストになってしまったような？（汗）
デリバリーサンタに免じてひとつ！って訳にはいかんか……。