さんざんぬいぐるみを投げたり投げられたり、叫んだり叫ばれたりがひと段落つけば、
今度はやたらと厳粛な気持ちになって、それが２人の顔にも表れていた。
「……あの、エリック……」
「なに……？」
まったくのはじめてのときのようだった。しかもそのはじめては、武勇伝としてのそちら系の玄人を相手に、とかいうのではなくて、
好きで好きで大好きでと思いつめていた相手との、晴れて迎えるハジメテのような気分だった。ブラッドは口の中がカラカラに乾いていたし、
エリックも舌がもつれるのと、２人ともに、心臓がタップダンスのクライマックスもかくやというほど激しく脈打っているのを感じていた。
どちらもお互いの顔を直視することが出来ず、それはなにも見たらどうこうというのではなくて、一目惚れをした相手を恥ずかしくてろくに見ることが出来なくて、
でも見ずにはいられないといった気持ちと似ていた。だから２人は、お互いの指先ばかりを見ていた。せめて相手の身体のどこかを見ていたかったのだ。
どちらの指先もかすかに震えていたのだが、どちらもそんなことに気がつくほどの余裕はなかった。
「あの、エリック、その……」
「な、に……ブラッド……」
「その、もしよかったら、なんだけど……」
「うん……」
そんなまわりくどく言わなくても、目線で成立したこともあった。その時の相手は誰でどんな風にしてそんな神業に近いことが出来たのか、
ブラッドにはさっぱり思い出せなかった。ただ、今それが出来たら、と思わないでもなかった。そうしたら、どうしてこんなに口が回らないのかいぶかしく思いながら
エリックにたった一言を伝えるのに苦労しなくてすんだだろう。いやダメだ。ブラッドはすぐそう思いなおした。エリックの目を見るだなんてそんな、
そんなことをしたら自分は、たちどころに息の根がとまってしまうに決まっている。そうでなければきっと、石にでもなってしまうんだ。そう思ったから、
ブラッドはぎゅっと目をつぶってこう言った。
「エリック、よかったら……いやよくなくても……」
「うん……」
「このあいだのつづき、いややり直しを……」
「うん」
「させてくれないか？」「してもいい？」
同時だった。２人同時にそう言ったのだった。
そして、目をぱちくりさせるとやっと、お互いに相手の顔を見ることが出来た。
そしてどれくらいぶりになるのかわからないほど久しぶりに感じるおたがいの顔は、かわいくていい男ぶりで得も言われぬチャームに満ちていて、
そしてとてもしあわせだった。どちらもてれたような笑みを浮かべていた。その顔をどうにかして保存しておくことは出来ないかと思うくらいに。そして、
フィルムになんかとっておくことは出来ないから、自分の乏しい記憶力で目に焼き付けておくことしか出来ないことを悟ると、
名残りは尽きないその笑顔の主を、どちらからともなく抱きしめた。
「エリック……」
「ブラッド……」
固く抱きしめあうとそれだけでは足りなくなって、むしゃぶりつくようにキスをした。
キスする間にも、手は相手の背中や腰、尻をまさぐって、世の中にこんなかぐわしい香りがまたとあろうとは思えないほどの香りを胸いっぱいに吸い込んで、
紙一枚だって入り込めないだろうというほどに密着していても、でもそれがゴールではないことを、２人とも知っていた。
「ブラッド……ここで……？」
立てた指一本分ほど離れて、それでもしゃべるごとにくちびるがふれあうほど近くにあった。その息や感触にうっとりしながらブラッドも囁いた。
大声を出すのはなんだか、この濃密な空気を壊してしまいそうだったからだった。
「ダメ……？」
ベッドルームにいくまで、我慢出来そうになかった。でもエリックがそうして欲しいというのなら、もちろんブラッドは我慢の限界にだって
チャレンジしてみせただろう。出来るかどうかは別にして。
「いい、よ……もちろんじゃないか……ブラッドの、いいように……して……」
抱きしめるブラッドの腕にそうようにして、エリックの背中がしなった。そのため離れた胸元に、どうしてブラッドが抗えようか？
肌蹴たその場所に顔をうずめると、息を吐くのも惜しく思いながらブラッドはエリックを横たえるべく腕に力を入れた。
「エリックが全部見たい、いい？」
ブラッドのおうかがいに、エリックははっきりとうなずいた。それから言葉にして。
「ブラッドなら……」
かわいくて食べてしまいたい、と思ったことは何度かあった。友人の赤ん坊などを見ていると、昔の人はうまいこと言うもんだ、と思っていた。なら今の
これはなんだろう？赤ん坊のようにまるのみにして口の中に隠しておきたいほどのかわいらしさというのではなくて、
喰らい引き裂きそれでいて抱きしめていたいと思うようなこの気持ちは。それなのにエリックはそれも許すというのだ。
エリックをぬいぐるみの谷間に横たえさせて、それでもその先をつづけることにためらいを見せるブラッドに
でも聞こえるかどうかといった小さな声で。「まだ？」と。
「……っ！」
覚悟は決めていても、その場所にブラッドの舌を感じたときは身体がすくんだ。
指で触れられたときは押さえ込むことが出来たのに、今度はダメだった。
でもブラッドに、なにがあっても続けるようにと言ったのはエリックだった。
やってみなくちゃイタくて大変なのかどうかわからないんだから、それに、今はダメでも回数を重ねていくうちに馴れることもあるだろうから。でも出来るだけ、
よくなるようにすることと、と誓わせたらブラッドは証人として法廷に立つときもかくやという厳かな表情で努力を誓ったのだった。
エリックが誓わせたのは正しかった。ブラッドはもう走り出してしまっていて、雪山をスキーだけで滑り降りているようなものだった。
途中で止まることは出来ないし、木にでもぶつかるか、下りきるしか道はなかった。それにもう、ブラッドは夢中だった。
夢にまで見たエリックの秘部をあますところなくその目で見ることが出来て、指で触れて舌で味わうことが出来たのだから。
エリックのわずかな反応やかすかな声のひとつひとつがブラッドを煽り立ててやまなかった。自分で自分を押さえていなければ
昂ぶるままに触れられてもいないのに達していたくらいだった。声は出すことが出来なかったが、胸の中で何度もエリックの名を呼んでいた。
確かに今、自分が触れ味わっているのがエリックであることを確認するかのように。
「あ……あ……ブラッド……」
最初は四つんばいの格好だったのが、じきに腕で身体を支えることが出来なくなっていったために、今ではかろうじて肘をつき、
でも頭はもう床につけてしまっていた。その床にまるで、こすりつけられるように頭が前後してしまっていた。ブラッドが舌だけではなく、
本格的に指を使い始めたからだった。何か塗っているのかブラッドの指はスムーズにエリックの中に入り、そして中の襞をなぞりだした。
そんなところを、しかも医者でもない者の指が入ることなどあろうはずもないと思っていた場所に。ブラッドの指は実に巧みだった。
エリックの中でも知らないところはないというまで極めようとしているかのように、一度ですべてを覚えようというように、エリックの中を時にていねいになぞり、
時に力を込めてついていた。そのたびに起こるかすかなさざなみにも似たものに、だんだんとエリックの頭はぼやけてきた。ブラッドのこれが
一刻も早く終わってくれるように、ブラッドが今すぐ満足して終えてくれないだろうかとまで思い始めたとき、その変化は起こった。
「――――っ！！」
「エリック？」
指はエリックを犯し、ブラッド自身はエリックの背筋をなぞるようにして舌を這わせていると、エリックが目に見えて反応した。
まるでうたた寝の夢から急に覚めたかのようだった。
「エリック？」
「あ……っ」
少し頭をもたげたエリックは、ブラッドの言葉も耳に入らないように首を振った。それにつられて乱れた髪にブラッドが手を差し入れた。
「あっ、……ブラ…ッド……」
「うん？」
エリックは細かく震えていた。ブラッドはもう片方の手で、エリックの背をそっと撫ぜた。
「ブラッド……ぁ……」
その動きもあったが、こらえきれずにエリックもうごめきはじめていた。
「あ……、ブラ…ッドォ……」
「エリック……エリック？」
「そこ……もっと……」
「そこ？ここか？」
「ちが……そっちじゃなくて……」
ブラッドの側からもほんの少し見ることの出来たエリックの顔はとおけきっていた。熱に浮かされたときのようでいて、歴然と違うその表情は
ブラッドのいつも見ているときだった。エリックとの『セックス』のときに、逐情しようとするエリックが浮かべる表情そっくりで――――そして全然違っていた。
いままでのすべての表情を足してもまだ足りないほど、エリックは恍惚としかいいようのない表情を浮かべていた。
「エリック……」
ブラッドの喉が鳴った。エリックもブラッド本人にもその音は聞こえなかった。
「ここ、か……？」
「――――っ！」
返事はなかった。必要もなかった。感電したかのようなエリックの反応だけで充分だった。
「エリック、エリック……イイ、のか？ここが？」
エリックは言葉もなくただただうなずいた。ブラッドのものがまた、どくんと大きく脈打った。
「エリック……」
「あ、あ、――――あぁっ！」
ブラッドの熱心な指の動きに翻弄され、エリックはもう半狂乱だった。それまでに感じていたためらいな恐れなどすべてどこかへ行ってしまっていた。
ブラッドが喉を鳴らしてそんなエリックの痴態を見つめていることも、指の代わりにもっと直截な剛直をねじこみたくて、うずうずしていることにも。
「エリック……」
かすれた声でブラッドが囁いたときにもエリックは答えることが出来なかった。自分が何に変わってしまったのかも分からなかった。
ブラッドの指と舌と感覚と、それが今のエリックにあるすべてだった。息をすることすら忘れてしまいそうだった。だからブラッドが。
「エリック……挿れる、ぞ……？」
決意を込めてそう言ったときにうなずいたのも、その言葉が聞こえていたからではなかった。反射的にうなずいて、それからブラッドの指が下がったことに
抗議の言葉を口にする暇すら与えられず、ほぐれきったエリックの『場所』に、ブラッドの熱く猛るものが押し入ってきたのだった。
「エリック」
「……」
朝の光が差し染めていた。
「大丈夫か」
「………」
ベッドでもなんでもない場所でやってしまったので、コトが済んだからといってかけるものもなかった。
着ていたものをいますぐ着込む気にもならなかったし第一汗やらほかの体液やら身体の下になっていたりしたものだからぐちょぐちょのぐっしゃぐしゃになっていた。
しかし、それではあんまりだろうと思って取りに行こうとしたブラッドだったが、エリックが少しでもそばを離れることを嫌がったので、
妥協案としてカーテンを１枚むしりとってかけていた。ただし、エリックだけ。エリックは蓑虫よろしくカーテンにくるまって、ブラッドに背を向けていた。
だからブラッドは全裸のまま、カーテン蓑虫になっているエリックのすぐ後ろに２枚の重なったスプーンのようにひっついて、エリックの肩を抱いたり背中を撫ぜたり、
わずかばかりのぞいているエリックの頭を撫ぜたりしていた。ニヤニヤ笑いながら。
「エリーック」
名前を呼ばれると、ぴくりと反応しているのは分かった。ふれている場所からも。
「エリック」
ブラッドは、さらにエリックにくっつくべく身を乗り出した。
「気分でも悪い？」
エリックが首を振った。しかし相変わらずウラッドのほうは向かないし声も出さなかった。
「声嗄れちゃった？」
今度はもっと激しく首を振りたてた。ブラッドとしては冗談ごとではなくそう心配したのだった。何しろ思い出しても顔がにやけるさっきのエリックはすごかった。
まず最初はブラッドが後ろからで、その次はこれなら大丈夫そうだと正常位でじっくり顔を見つつやって、最後にはなんとエリックみずからがブラッドに乗っかるという
眼福この上ない体位でしめくくったのだった。久しぶりとはいえ３回も出来ちゃうなんて俺もまだまだ……とか思いながらそしてエリックを何度も堪能しまくったことに
この上もなく満足しながら、正真正銘のハジメテを終えたのだった。こんなに心地よい疲れはなかった。
そして、こんなに愛しくてならなかったことも。
もしかしたらもしかして、１回やってみたら、案外ハイそれまで、とかいうことになったりなんかしないだろうか？自分は決して飽きっぽいほうではないと思うんだけど
と思いつつも、何しろ男同士という勝手の違うことは初めただったから、いくら相手がエリックでもどんな可能性もありうるし……と心の準備だけはしていたのだった。
ところが、よかった、などという単純な言葉では表現しきれないほどものすごーくよかったし、抱いたらエリックはさらにさらにステキでより愛しくなった。
はっきり言って昼も夜もこうして抱きしめていたいくらいだった。たとえスーパーに行く間だけでも離れるなんて耐えられるだろうか？と不安になってしまうくらいに。
ブラッドはだからとてもステキだったさっきのセックスについて、エリックと少しおしゃべりしたい気分だったのだが、肝心のエリックがカーテン蓑虫になってしまって
その夢は果たせなかった。最中のエリックは実にいやらしくてセクシーで、思い出すだけで鼻血が出そうになるくらいにで、ジューシィで
どこをとっても最高でそれが自分のを銜え込んで身悶えているなんて、こんなステキな眺めがまたとあろうかとブラッドは何度も思ったくらいだった。
「それじゃどしたの？もしかしてよくなかった？」
そんなはずはあるまいと思ったが、もしかしたらそういうこともあるかもしれないと、ブラッドはココロの襟を正した。自分にとってはまさにパラダイスだったあの体験も、
エリックにとってはなんだこんなものかというような物足りない、期待はずれなものだったのかもしれないと。
「……そんなことない……」
やっとエリックはしゃべってくれた。その声は少し掠れてはいたけれど、確かにエリックの声だった。
「それじゃどうして？」
ブラッドが勢いを得てエリックにのしかかった。ちょっと重いかな？と思いつつも、エリックが窒息しない程度には加減して。
「……ブラッドのバカ」
「え？」
くぐもったエリックの言葉は確かにブラッドのバカ、と言っていたようでこれはやっぱりブラッドのベッドマナーの何かが
エリックのお気に召さなかったに違いない、とブラッドは顔色を変えた。
「どこかおかしかった？変だった？言ってエリック直すから！」
ブラッドは必死になってそう言った。それはそれなりにやんちゃな時代をすごしてきたから、あまり胸張っていえないような場所への出入りもあった。
それで突飛な体験をしたこともあったけれど、今までそれで眉をひそめられたことはなかったから、これでいいんだと思っていたけど
何かエリックの越し方からすると許せないような不行跡があったとか？努力が足りないとかそういうことなの、ねぇっ！？と、
ブラッドは思わず上体を起こしてエリックをゆすぶりたいくらいにあせっていた。
「お願いだから、エリック！！」
悲鳴のようなブラッドの言葉に、さすがにエリックもあわれをもようしたのか肩に手をかけられるままごろんと寝返りをうってブラッドのほうを向いた。
「ブラッド？なんて顔してるんだ、ハンサムが台無しだぞ？」
そう言って伸ばしてくれたエリックの手の先で、自分はいったいどんな顔をしているんだろうと考えたのは、脳の中のほんの一部に過ぎなかった。あとの大部分は
エリックを見つめ、頬に伸ばされたエリックの手を強く握りしめその指先にくちづけることしか出来なかった。
「ブラーッド」
「な、に……」
「君って本当にときどきバカだな」
「なに……」
「泣くなよ」
泣いてなんかない、と言おうとしたがほとんどもう、泣きたい気分になっているのは認めざるを得なかった。もう一押しされればきっと、
おいおいと泣き出すだろう。さっきまでの雲の上と今いる地の底とでは、それくらいの差があった。
ブラッドは、涙のように頬を伝わるものに気がついた。エリックの指だった。
エリックの指が、もしもブラッドが泣いていたら雫がとおるであろうルートをなぞっているのだった。まるで架空の涙をぬぐっているかのように。
「バカって言ったのは」
「うん……」
「どうしてもっと早くこれをしようって言わなかったのか、ってこと」
エリックはたとえようもないやさしい笑みを浮かべてブラッドの情けない顔の中央に位置する鼻にかじりついた。
「損したぞ、今までしないでいた時間を。どうしてくれる、ブラッドのせいだ。ブラッドのいじわる」
エリックはそう言って笑った。ブラッドの１番好きな笑顔だった。
エリックの表情は、ブラッドにとってはどれも１番だったが。
「わたしはこんな方法もあるってこと」
被っていたカーテンをふわりとブラッドの肩にもかけてくるみこんだ。
「全然知らなかったんだからな」
汗の引いた乾いた肌が触れた。そんなささいな接触にもドキドキした。エリックの触れるところすべて、エリックが見つめるところすべて。
あの南米ボゴタのホテルで、自分はどうしてあんなに大胆に振舞えたんだろうと不思議に思えてならなかった。今は目の前の、
手を伸ばさなくても届きそうなエリックに触れるのが怖かった。
「おもしろいこと言うなぁ、ブラッドは。ベッドマナー？こっちもそう思うかもとか思わないの？」
自信家なのかと思えば捨てられそうな子犬のような顔をするし、まったくもってブラッドは分からない。ミステリアス、といってもいいそれともビックリ箱？
とにかくエリックは、おだやかなのも好きだったがこういう面白いのも好きだった。ブラッドのすることはあきれたり面白かったりハラハラさせられたりドキドキしたり、
本当に見飽きるということがなかった。そして、つきせぬ泉のように思いがあふれて止まらなかった。ただブラッドが好きだという。
またこんな風に思うことがあるとは思わなかった。彼女が死んで、もう自分にとって残りの人生は余生かも、と思っていたくらいだった。
まさかどこの誰でどんな人なのかも知らないのに、吸い寄せられるように近づいてそして、好んで絡め取られるようにして
縛りつけあうようなことをしないではいられなくなるとは思わなかった。まったく思いがけないなりゆきだった。
「エリック……」
「ブラッド、まさかこれきりにするつもり？」
「エリック……」
「恥ずかしいのと、反芻するのにちょっと籠もってたら、もうそんな顔するし」
「エリック……」
「ほかに何か言うことあるだろう？」
「……愛してる、エリック……」
「はいよく出来ました」
エリックはごほうびにブラッドの呆けたように開けたままになっているくちびるを啄ばんだ。
「もうちょっと口閉じてくれる？」
ブラッドがその要望に従ったのは言うまでもなかった。
「うまくまとまったかな？」
「……ではないかと」
隣家の大声が聞こえなくなってずいぶんたった。ドアや窓の開く音は聞こえなかったから、ということはつまり、仲直りが出来たということだろう。このまえの
ホームパーティのときなど、２人して世の終わりのような顔をしていたものだったが。
「よかったねぇ、エウドロス」
「……はい……っ」
居合わせたご近所も気にして気にして。気のいい２人はご近所中の人気者だものだからなおさらだった。
「あれ？」
「どう……され……っっ」
ベッドサイドの窓から身を乗り出すようにして隣家を見ていたパトロクロスがいぶかしげな声を上げた。
その拍子に、収まったままだったものがより深く突き入れられることになり、エウドロスは声もなく呻いた。
それをなだめるためにいいこいいこと髪を撫でながらもパトロクロスはそこから伝わってくる愉悦に笑みを浮かべた。
「あ、すご……く、いい……」
「………っ！」
「エウドロスは？」
「……っ……っ！」
なんとか答えようとするものの、どうしてもそれが言葉にならず、エウドロスはついに音をを上げた。
「パト……っ！」
「エウドロス――――」
そのままパトロクスたちはまたつづきに入ってしまった。
だから、ブラッド宅の前に、果し合いに来たようにして立つ、若い黒髪の男について、ついにブラッドたちに知らされることはなかったのだった――――。
すまんお花ちゃん、あなたが嫌いなわけじゃないけど
どーしてもあなたは後回しになっちゃうわ（笑）。
いい加減思わせぶりは終わりにして
そろそろどーんとぶつかっていただかないと
話がいつになっても進まないわー。
まあメインが２人の夫婦生活なんだから
進んでいると言えば進んでいるのかも？（笑）