『はい、どーぞキング！』
「何コレ？」
『ハッピーバースディ、キング！』
「ああ、誕生日のプレゼントね。それでコレ、ね」
皆からの、心ばかりの心から大変だったであろうプレゼントを目の前に、キングは笑ってそう言った。
「そう！似るなと焼くなと！」
「突っ込むなと、ひっくり返すなと！」
「裏返そうと舐めようと！」
『どうぞお好きに！』
「ありがとう」
キングは、部屋に詰め掛けた部下たちに、にっこり笑ってそう言った。「喜んでくれて良かったですよ」
「苦労した甲斐がありました」
「つかまえるのは大変で」
「リボンをかけるのも一苦労で」
「しかもリボンが似合わないときたもんだ！」
いやいやまったく、と彼らはうなずきあった。確かに、とキングもうなづいた。
キングの居間はとても広いのだが、さしも広い部屋も大の男がひしめき合っていては息苦しかった。
「邪魔者は消えますから」
「プレゼントとどうぞごゆっくり」
「いまさらかもしれないですけど」
「少しは気分が変わりますよ、きっと」
『それではこれで！』
「うん、どうもありがとう」
皆は口々におめでとうとかお幸せにとか、明日の昼食はごちそうですからとか夜食とケーキが冷蔵庫にありますからとか言って部屋から出て行った。後に残されたのは、キングとプレゼントだけだった。「贈られちゃった」
「……君に私をプレゼントしてどうしようっていうんだ……」
「まあまあまあ。黙らっしゃいプレゼント君」
キングの前には赤いリボンでぐるぐる巻きにされたイアンがいた。
黒い上等な燕尾服は、金髪に映えてとても似合っていたが、それもリボンで皺になっているかもしれなかった。
「名前なににしよっかなぁ。もらったんだからまずは名前をつけることからだよね？」
「左様で……」
逆らっても無駄なことは分かっていたし、なにより逆らう元気がもう、イアンにはなかった。
「そうだ！『イアン』、『イアン』にしよう！」
「……キング……」
「この名前、嫌かい？」
「いえ……とても嬉しいです……」
「お祝い返しはこれにしよう」
「はいはい。……って、何してるんですキング！」
「え？やっぱりプレゼントっていったらこれが定番でしょう？どれどれ……」
「………っ！」「あ、やっぱり。ココにもリボン巻いてある」
芸が細かいね、みんな、とキングはキャラキャラと笑った。
キングがそこだけ開封して確認した、身体の中心にある突起器官にもちゃんと、細いリボンがかわいくグルグル巻きになっていた。キングはそこを持って、ちょんとキスをした。
「……おまけに全身磨きたてられたよ……」
「えっ」
おや、とイアンは思った。さすがのキングも、大の男にそれはあわれだとでも思ったのだろうか？
「そんな楽しそうなことを！？……先を越された……っ」
イアンはがくーっと脱力した。
「おっとっと。危ないよ、イアン」
「ああ、悪い……」
「気分でも悪いの？それじゃあベッドに行こうか」
「……その笑い方は止めてくれるか……おっかないから……」
「大丈夫！痛いことはしないからねー、気持ち良くさせてあげるからねー」
「勘弁してくれ……」
「ダーメ。イアンは俺の誕生日のプレゼントなんだから♪」