「ロバート」
ベランダランチの場から、１人部屋に入ってしまったロバートを追って、アブナーもまたロバートの部屋へいった。鍵など掛かっていなかったし、ドアもちゃんと閉まりきっていなかったので、ランチの皿を持ってきたアブナーには有難かった。
「昼めしを持ってきたぞ」
食べないとダメだぞ、とまるでおかあさんのようにアブナーは言った。
「ロバート」
ロバートはベッドにもぐりこんでしまっていた。
「具合でも悪いのか？」
アブナーのその問いには、否定の形に塊がうごめいた。
「ロバート、ならなんで昼も食べないで昼寝の体勢なんだ」
アブナーもベッドのはじに腰掛けて、塊をぽんぽんと叩いた。
「…………」「これはスティーブの分だから大丈夫だぞ」
「え……？」
「スティーブには、あのロバートのおもちゃの乗った皿で食べるように厳命してきた。リーダー権限でな」
「アブナー……」
ロバートがもそもそとシーツの塊から顔を出した。
「やあやっと出てきてくれた」
そこにはアブナーの笑顔があった。
「食べてみてくれないか？新作なんだ、感想を聞かせて欲しい」
そう言っていい匂いのする皿をずいっと押し出した。そこには、アブナーの分の皿もあった。
「食べるのは基本だぞ。食べないとロクなことを考えないし」
「……うん……」
「あ、そうそう、ロバート、手を出せ」
もごもごと、ベッドの上で食べ始めたアブナーが言った。
「手？」
もそもそとアブナー謹製のランチプレートを食べ始めたロバートが言った。「そう、こうやって」
アブナーは手を耳の横に挙手するようにあげた。言うとおりにロバートが手を上げると。
「やったな」
アブナーの手が勢いをつけてロバートの手を握った。音を立てて。
「え……？」
「前回は銃デビューで、今回は爆薬デビューだ。華々しいじゃないか」
わたしはどっちでもドジを踏んだけどな、とアブナーは苦笑した。
「そんな……」
「これからもよろしく頼む、ロバート」
そう言ってアブナーは、掲げた手を握手のための位置まで下ろし、両手でロバートの手を握った。ロバートの、銃を撃った手を爆弾を作った手を。
「こちらこそ、よろしく、アブナー……」
料理ともども、と言ったロバートに、アブナーは笑った。
鉄のようになっていた心をやわらかくする笑顔で。