「やめろヴィクター！」
それ以上見ていられなくて飛び出した。
他の特殊部隊の連中で暴れだしているのもいたが、はっきり言ってヴィクターのことしか眼中になかった。
「うるせぇ、お楽しみの邪魔すんじゃねぇ、チビ」
もちろんそんなことでヴィクターの『お楽しみ』を止められるとは思っていなかった。それでも、止めなければならなかった。これ以上趣味の殺戮を見過ごすわけにはいかなかった。
ストライカーが自分は従軍したと言ってえばっているベトナム戦争の頃からだった。必要のない殺しをヴィクターが楽しむようになっていったのは。この国は戦争だらけだから、俺たちのような胡散臭い兄弟でもどうにか食いっぱぐれることなく生きていくことが出来た。それにあれは戦争だった。やらなければやられる場所だった。
しかし今は違う。
ヴィクターは変わってしまった。そして変えたのは多分俺なのだ。「おおお『お楽しみ』ってなんだ！卑猥な言い方すんじゃねぇ！」
俺のかわいいジミーはたちまち真っ赤になった。かわいい奴だ。
「へぇ卑猥？何が卑猥なんだ、え？仕事中だぜ？」
こんな風な反応をするから、面白くてついついからかってしまう。それをこいつは、分かっているんだろうか？兄弟だからって、俺がどうしてずっとこいつといるのかを。
「うるさい！俺はもう抜ける！！」
「なんだと」
背を向けようとするジミーの腕を掴むと奴は暴れた。いつものことなので、気にしないで引き寄せる。
「俺から離れるだと？冗談じゃない。おまえは俺の弟なんだぞ」
「だから離さないってか？あんたの親父そっくりだな！」
「行かせねぇぞ、ジミー！」
「ちょ…な…止めろ、ヴィクター！」
どうやらまた分からせてやらなくちゃいけないようだった。俺はジミーを抱えて密林の奥に飛び込んでいった。「おーい、また始まったぞ痴話喧嘩」
「兄弟喧嘩だろ？」
「同じことさ。あ、分かった分かった。隕石が落ちたのはあっちだ」
「いっつもだもんな。こっちは独りもんなんだから、いい加減にして欲しいぜ」
「それあいつに言ってみろよ。強烈に嫌な顔するぜ」
「んなもん気にしてられっかよ。いっつもいちゃいちゃしやがってよ。あ、こっちだってよ」
「もうすぐヘリ来るぞ。そうそう、裸でくっついて寝るのは止めて欲しいよなぁ」
「あいつら、置いてきましょうか？」
「そういう訳にも行くまい。野放しにしていくと現地の方たちに迷惑だ。……１時間もしたら回収にくればいいだろう。まずは隕石の回収だ」
『了解！』
弟はどうも、口封じに皆殺しよりも
兄がそれをやりたがっているというところに
こだわっているように思えまして。
そこのところをちゃんと
話し合ったほうがいいと思うよ、お兄ちゃん。