今日はハロウィンだった。
いつもなら、イベント好きのブラッドや、楽しいことの好きなエリックは、そういう面白そうな行事は見逃さないのだが、この日はちょっと様子が違っていた。
「エリック、コーヒーこれで最後」
部屋の中央にあるソファセットのローテーブルには、ありったけの飲み物やスナックが積まれていた。飲んだもの食べたものを入れるともっとたくさんだった。
「入れよっか？」
ソファによりかかり、見るでもなく雑誌をめくっていたエリックがブラッドを見上げて言った。
「うーん、でも、もうそろそろコーヒーは止めにしてもいいかも」
見上げるエリックは、今日もなんてかわいいんだろうと思うと、自然と顔が降りていった。啄ばむようなキスと笑顔を交わすだけで、満ち足りた気分になれた。ここのところのハードワークの疲れが、一気に霧散していくようだった。
「飲みすぎかな？」
見上げるエリックのそばにいたくて、ブラッドはそれまで見ていた映画をとめ、ソファに戻らずエリックの隣に座った。「そろそろね。飲む？」
「一口」
ブラッドが差し出したマグカップから、目を細めてエリックは飲んだ。水が沸いてくるように満ちていくものがあった。これの名前はさまざまで、でも今の気分で言うなら『しあわせ』だった。
マグカップを置くと今度はエリックの頭を引き寄せて、さっきよりよほど深くて長いキスをした。そんなことをしなくてもエリックは応えてくれるだろうとは思ったが。だからブラッドの手は、エリックのくるくるの髪からもむようにして首をすべり肩口に止まろうかどうしようか迷って、結局背中に落ち着いた。
相手を信じているいないに関わらず、もっとそばにいたかったしもっと触れていたかった。エリックもそれは同じようで、ブラッドの伸ばしたままの髭をつまんでからキスの合間にくすくす笑っていた。「…ブラッド……」
うっとりと呟くエリックの声は、どうしてこう耳を蕩かすんだろう、こんなエロい声を映画館なんかで、あらゆる年齢層に鑑賞させていいものなんだろうか？
ブラッドが映画のレイティングシステムのあり方に疑問を抱いているうちに当のエリックは、ブラッドに絡みつくようにじゃれはじめていた。
「よしよし」大事な大事なエリックをあやしながらブラッドは、伸ばされた手にキスをしたり、髪にキスしたりをくり返した。何回キスしてもしたりなかった。ここのところのすれ違いの筆舌につくしがたものがあった。
ブラッドのオフとエリックのオフはことごとく食い違い、ちっとも仲良くする時間がとれずにいたのだった。エリック不足ブラッド不足で爆発する前に！とようやくもぎとった休みが今日だった。もうすぐブラッドはまた新作映画の宣伝に出かけてしまうし、エリックも次回作の準備があった。その貴重な休みをどう過ごそうか楽しい相談がまとまった結果がこれだった。「あーそういえば今日はハロウィンだったか」
この部屋にカレンダーはないから、ブラッドが思い出したのはまったくの偶然だった。
「そういえばニュースで言ってたかも……今から出す？」
いつの間にかブラッドに膝枕されるような格好になったエリックも思い出した。去年は提灯を飾りお菓子を用意し、ちょっとしたパーティをしたことを。
「いいよ。今日はこうしていよう」
そんなエリックに覆いかぶさるようにキスをして。
「お菓子くれたい？……それともいたずらされたい？」
今にも何かしでかしそうな顔をしてブラッドは問いかけた。
「なんだいそれ」
エリックは影になったブラッドの鼻をつまんだ。
「そんなの……決まってるだろう？」
それから今度は、ブラッドの耳をつまんで引っ張った。そして、オーバーに痛がるふりをするブラッドに囁いたのだった。
イタズラ、シテ。
ブラッドはまだ髭が長いのか？
はっきりしなかったので、
まだあることにして書いちゃいましたが……
あ、ありそうですね。ネット海で探索したところ。
しかしバイク事故？さらに『また』がつくの？
気をつけてくださいよ〜日本に来れないとか
大怪我したとかいったら泣いちゃいますよ！