「あ………っ」
エリックは身をくねらせてブラッドの抱擁を受け取っていた。
恍惚とした表情を浮かべながら。
「ブラッ、ド……あ……」
座るブラッドの上に腰掛けているから、自然頭の位置は高くなる。
ブラッドから見ると目の前にはちょうど、悩ましげに震えているエリックの喉があった。
汗に滑る背に腕を回し、背骨をなぞりその消失点目指し――――。
「あ、ああ……！」
「あ？」
目覚めるとそこは光まぶしい部屋だった。
「目が覚めたか？」
ソファで寝こけていたようだった。
ブランケットがかけてあって、向かいのソファでは、ブラッドが新聞を読んでいた。
ケットどうもありがとう、と礼を言うと、どういたしまして、と返された。
「うん……なんか……夢を見ていた、ような？」
ケットの端を握りしめながらエリックは首を傾げた。
「夢？どんな？」
新聞を見ながら、ブラッドはまだ半分寝ぼけたようなエリックに笑いかけた。
「うーん、よく覚えてないな……」
「夢だからな。起きた途端に忘れちまうもんだ」
読み終えたのか、新聞をたたみながらブラッドは言った。テーブルの上の茶器を引き寄せながら。「お茶飲むか？」
「うん、ありがとう……あ、そうだもらいもののビスケットがあるんだ……」
「そいつはありがたい」
ブラッドはティポットに残る茶葉を捨てて新しいものをざらざらと入れた。
「でもなんか……」
「うん？」
エリックはケットをたたみながら、捕まえ損ねた夢の残滓に思いを馳せながら呟いた。
「いい夢だったような気がするなぁ……」
ブラッドは笑った。
得たり賢し。