まずはにらみ合いだった。
本来平穏であるべき教会の前は、さながら真昼の決闘場のような剣呑な雰囲気に染まってしまっていた。
通る人も、見る人もいないのは幸いなことだった。
「……この教会に何の用だ。とっとと立ち去れ、そして２度と近寄るな」
用件は簡潔かつ的確に。
ディヴィッドの目は、今にも火を噴きそうなほどだった。
「……おまえ如きにそんなことを強制される謂れはないな」
ふふん、とせせら笑いながらベルフェゴールは応じた。
このところ気に入っているのか、今日も若い男の姿だった。
だからそうしてにらみ合っていると、若い者同士が反目しあっているようだった。そのままじりじりとにらみ合う。どちらも引きたくはないし、かといって攻撃を仕掛けるのもはばかられた。ここは人間の世界であることもさることながら、こんなところでもめごとを起こしたらきっと、教会を預かる神父は悲しむし、居候には呆れられるし、そしてきっと怒られる。
それは出来たら避けたかった。かくて千日手。
じりじりじり。「……何やってるの？」
そこへやってきたのは、買い物袋をさげた教会の居候だった。
「そんなところで見つめあってると恋にでも落ちてるのかと思われるヨー」
のんきにそう言って、ヴィゴは２人の真ん中を通って教会への石段に足をかけた。
『誰がこんなのなんかにっ！』
２人揃ってそう言った。肩も驚きでふーふーいっていた。
「昨日焼いたビスケットがあるんだ。良い子にしてるんならモーニングティに招くけど？」
どうする？とヴィゴは首だけで振り向いた。
『…………』
残念ながら、否やのあろうはずもなかった。
「肩ぶつけるなっ！」
「そっちこそ人の足蹴るなっ！」
もしかしたら仲良しさんなの？