「ああ、これが新しい白の木ですか」
セオドレドは植え替えられた広場の噴水にある木の肌に、手を伸ばしてそう言った。
「ああ、ミンドルルインの山中で発見されたのだ」
誇らしげにボロミアが言った。そう紹介できるのが、嬉しくてならないように。
「あなたが教えたんでしょうに」
「そうしないと、いつまでも見つけてもらえなさそうだったのでな」
お節介はなおらん、とボロミアは照れたように頭をかいた。
「これが生きている白の木なんですね……初めて見ました。見ることが出来ようとは……」
「私も驚いた。……正直木が白いなんてどんなんだ？と思っていたが」
「美しいものですね」
セオドレドは思い切って手を伸ばし、木肌に触れようと試みた。しかし、その手が気に触れることはなかった。
「……やはり駄目ですか」
「それだけは残念だな。私もこのなめらかそうな木肌に触れてみたかった」
ボロミアは、新しい白の木を見上げて言った。「見ることが出来ただけでもよしとしますか」
「そうせねばなるまいな」
顔を見合わせ、２人ともに苦笑した。
「さて、そろそろ行こうか」
「はい。ああ、衛士たちがやってきました。もうすぐ始まるのでしょう」
「触れも出来ないのは分かっているのだが、どうも素通りされるのは変な感じなのでな。さっさと退散するに限る」
「まったくです。特等席で見ることは出来ますけれどもね」
「しかし父達にはかち合わんようにせんとな」
「ええ。あの人たちの近くではきっと、やかましくてかないませんよ」
「困ったものだな、喧嘩友達というのも」
「沈み込まれるよりはいいですけどね。では、参りましょうか」
「ああ。良い天気だ。あつらえたような戴冠式日和だな」