「このとき、……結構真剣なんじゃないのかい？」
「どこ？ここ？」
「そう、ここ」
それはフランクが、鞍を始めとする馬具をはずして砂漠を疾駆する場面だった。
「ここに限らず、いつだって俺は真剣だよ」
ふふん♪とエラそうにヴィゴが言えば。
「…………嘘つけ」
ショーンも根暗く、だがはっきりと言い返した。「失敬な！何条を持ってそう言うわけかね？」
「どこの役だいそりゃ……」
「ははははは。だって裸馬に乗って勝たなきゃいけないんだぜ？真剣にやらなきゃ落っこちるさ！」
いかにＴＪが賢い馬でもね、とヴィゴは言った。
「裸馬ね……ああ、そりゃ大変だ」
「そういえばあんたもちょっと乗ってたっけ？」
「ああ。あれは乗馬の経験がどうとかいう問題じゃないからな……」
「そうだな。俺はまだ座って乗ってたわけじゃないからマシかな？」
「実はわたしの時は布の下にもマットレスを敷いてたよ」
「だろうねぇ……」「それからそこも本気だったろう？」
「どこ？」
「よくもヒダルゴに怪我をさせたな、って怒るところ」
「ふんふん」
「あと井戸の番人に一泡ふかけるところと……」
「なるほど」
「船倉でケンカしてる時も」
「ふむふむ……ショーン・ビーン君」
「なんだい？」
「俺はこれでも役者なんだぜ？」
「知ってるよ」
「じゃあそんなに俺は演技じゃなくて素でやってるってのかい？」
「………そうとも言えるか」キーっ！とヴィゴは怒ったふりをした。
ショーンは怒られるふりをした。
テレビの中ではフランクとヒダルゴが勢いのまま海に突っ込んでいた。
テレビの前の２人はいつのまにかキスをしていた。
映画鑑賞が終わったら、テレビは消しておきましょう。