（やっちまった……）
それが最初の感想だった。
若かりしやんちゃ時代にそういうお誘いや機会がなかったわけではないが、興味はあったがそれ以上のものはなかったので、ずっとお断りしていたというにのに、それがこの有り様はどういうことだ？嘘もいえないベッドの上に、裸の男２人というのはシュールすぎる。これが裸の男女でも、決まり悪さはどっこいどっこいかもしれなかったが。
そこまで考えてはたと気がついた。
いや待て。これがもし、男と女のことならここまで「どうしよう？」にはならないはずだ。
もしも成り行き上のことでも、お互い大人ならその時限りのことと別れることも可能だし、忘れましょうという手もあった。しかしこの場合は、いったいどうしたらいいのだろうか？
誰か教えてくれないだろうかと真っ白いシーツを握りしめても、皺が寄るばかりで答えは浮かび上がっては来てくれなかった。人生ってまったく分からない。
道を曲がったら、うっかり水たまりに足を突っ込んだような気分を味わいながら、同じベッドに逗留することになった相方に、お互いにっと笑いかけあった。
それは思わぬ効果を上げた。
自分の放った笑顔に果て、ひとしく相手の笑顔にくらりときて突っ伏してしまったのだから。
（こ、これはちょっとやばいかも……）
推定酒の勢いでやってしまうことよりも、こっちの方がよっぽど不味いんじゃないだろうか？とは、どちらも突っ伏しながら考えたことだった。
どう見ても場を誤魔化すための引きつり気味の笑顔なのに、朝日の中で見るそれがとてもチャーミングだと思って見惚れてしまいそうになるのだったらかなり危険だった。（誰か助けてくれ…！）
しかし助けは来ない。強いてあげるとすればそれは時間。チェックアウトタイムのみだった。
だがそれは、この出来事を有耶無耶のうちにしてしまうという危険をも同時にはらんでいた。
『あの……』
思い切ってかけた声は、見事に２人同時になった。
「あ、いやあんたからどうぞ！」
「いやいや君のほうから！！」
譲り合いのうつくしい精神を発揮している間にも、時計は動くし時間は進む。
『………………っ』
焦っていてもいなくても、時間は過ぎる、確実に。「あのヴィゴ……」
「えーと、ショーン……」
がんばりましょう。
今後の展開の色合いは、ひとえに次の言葉にかかっているのだから。