「また会えたね」
「うん！」
「今日も神殿にいるの？」
「うん。俺が神殿になんて行くようになったから、エウドロスも驚いていた」
「笑いごとなのかい？そんなに行ってないなんていけないよ」
「だってつまんないんだもん」
「それですまないよ普通は」
「今は来るよ。おまえに会えるから！」
「会えなくてもお行きよ」
「えー」
「しょうがないなぁ」「もうすぐ弟か妹が生まれるんだ」
「俺にもいとこが生まれるんだ」
「楽しみで楽しみで」
「うん！いろんなこと教えるんだ！剣だって馬だって！」
「女の子だったらどうするんだい？」
「……おんなのこでも」
「本当に？泣かすんじゃないか？」
「そんなことするもんか！」「おもてにでてあそべるといいのにな」
「うん。ここでしか会えないものね」
「神殿の中じゃ、剣も馬もだめだし」
「ほかに遊びじゃ駄目なのかい？」
「なんでもいいよ。でも何もないだろう？」
「うん。なーにんもない」
「でもいいよ、ヘクトルがいるから」
「僕も、アキレスとこうして話が出来ればいいや」
「いつか外であそべるといいな」
「そうだね」
「ヘクトルさま……ヘクトルさま」
「う……ん？」
「お起きになってくださいまし。こんなところで寝入ってはお風邪を召します」
「うん……ありがとう」
「赤さんが生まれましたよ。男の子です。弟君ですよ」
「弟！」
「さようですよ。さ、母上のところに参りましょう」
「うん！」「アキレスさま……やっぱり……」
「………なにがやっぱりなんだエウドロス」
「神殿に行かれるなどという珍しいことをなさっていると思ったら、おやすみになっていたからです」
「……いつの間に寝たんだろう？」
「ああ、そのように目をこすられては……メノイティオス様の御子がお生まれになりましたよ」
「本当！男の子！？」
「はい。それは元気に泣く御子でした」
「見にいく！」
「はい。お伴仕ります」
「夢でもご覧になっておられましたか？」
『どうして？』
「とてもよいお顔でおやすみでしたから……」