「裸馬に乗るってのはホネだね」
「…………そうかい」
「なんだいその『間』は？」
「こないだオーリも同じこと言ったのさ」
「ああ、オーリ。彼の方が乗馬シーンは多いから大変だったみたいだね」
私は少しだけだったから、と笑って言った。気になるポイントはそこかい？
「あんたは馬乗りなれてるだろう？」
乗馬シーンのある映画とかも、初めてじゃあないし。
「それも鞍あってのことさ。まったく！あれを考案したした奴には大感謝だね！でなけりゃきっと、練習なんぞしやしなかったことだろう！」
ありがたいことだ、とあんたはうんうんうなずいた。
「馬にとってはまったく有難くなんてないだろうけどね」
そもそも人間をのせるのもね、とあんたは笑う。人の気も知らないで。「なあショーン」
「なんだい？」
「オーリと寝たって言ったらどうする？」
「『寝た』ってセックスしたってことかい？いわゆる最後まで？わたしとしているときのように？」
腕組みするあんたの質問に、ひとつひとつこっくりと頷いた。
「うーん、そうだなぁ……殺すかもしれないなぁ」
「誰をっ！？」
「君を。それから私も死ぬ。実際には出来ないけどね」
「……どうして？」
「君にはヘンリーがいるし、私にも娘がいるからだよ」
彼女達が後ろ指さされるような真似はしたくないからね、と。「だから止めておいて欲しいなハニー。……したのかい？」
「……しない。するつもりもないよ」
「それがいい。君は経験が……ないかもしれないな。あまり相手を試すようなことはしないほうが良いよ。言うだけでもね。確かめたかったら他の方法にしなさい。――――悪いことは言わないから」
両頬を包んでいる手の指が、頤から首にかけてをなでているのは、ものすごくスリリングなんだってことに始めて気づいた。――――今度仕事で使うときは肝に命じておこう。オーリには……教えてやらないけど。
『運命』は俺とショーンを会わせてくれたけど、あんたと会ったのは仕事の関係。
この差はどこから来るんだろう？
答えは――――『運命』だけが知っている。