「あーなごむなぁ」
「そうだね」
「いい湯だなっ」
「いやまったく」
「なんだよーその気のない言い方」
「いやいきなり電話してきて『温泉に入らない？』なんていうからてっきり本物のことかと思って……」
あせっちゃったよ、とショーンは笑った。
「なんだよー『温泉』には違いないだろ？ニホンの温泉の元だぜ？えーと『クサツ』の湯」
ヴィゴはお湯の色が変わるほどどぼどぼ入れた入浴剤の袋を手にとって眺めた。
「温泉のお湯ってこんなに色が変わってたっけ、ヴィゴ？」
私は君ほど、ニホンに造詣が深くないんでね、と言いながらも即席温泉を楽しんでいた。たとえ本物のように、手足が伸ばせるほどの広さがなくとも。
「そういうとこもあるよ」
でもクサツはどうだっけ？と言いながらヴィゴは、これも入れてみようと『ハコネ』の湯も入れた。どう考えても入れすぎである。「あーニホンの温泉はあったまるなぁ……」
「風呂の捕らえ方が違うからね」
狭い浴槽に、大の男２人。どう考えてもきちきちだった。足も伸ばせやしない。
縮こまって入っていても、温泉は温泉だった。一応。
「………えいっ」
「こら……何をする」
「ナニか」
「こーら！浴槽でするな浴槽で。行儀の悪い」
「一緒に入ってるんだからいーじゃないかー」
「沈まない」
ヴィゴは鼻までつかってぶくぶく始めた。
「ちぇーえいっ！」
しかも、わりと懲りない。「……襲うぞ」
「襲って襲って！」
「……じゃあ止めた」
「けーちけー……あ」
「うるさいよ、風呂は静かに入るもんだろう？」
「や……じゃこの手ナニ？足も……」
「静かでも出来るだろう？リクエストもあったことだし」
「あ……お湯、が……はい、るぅ……」
「熱い？出ようか？」
ヴィゴが首を振ったので、水滴が飛んだ。勢いよく。
「のぼせるから続けて……」
「変なリクエストだ……」
「ん……」
そりゃあもう、ほっこりと。