「あー、やっぱりあんた抱きごこちいーなー」
アパートメントに戻ると、ヴィゴはいきなり抱きついてきた。
「あったかくて、気持ちいいなー」
どうにか一目に触れずにヴィゴをここへ連れてくることが出来て良かった。
しかも、あんな廃墟の教会でセックスしてしまったし。
「ヴィゴ？早く横になったほうがいい」
何しろついさっき、手ひどい扱いをしてしまったのだからと言うと、ヴィゴは笑った。
「あれくらい大丈夫！俺は頑丈に出来てるんだから！」
そう言って、ますます腕の力が増した。
「そ、そうか……？」
抱きつかれているのと落ち着かない気持ちになったが、ヴィゴの好きにさせていた。
何しろさっき首をしめるなどという、まさに前時代的な行為をしてしまったのだから。「……頑丈なのは」
「パートリッジ？」
「そういう経験が過去にもあるということなのか？」
自分の体温が、一気に下がったのを感じた。
そうだヴィゴは最初からすべてに馴れていた。それはすべて、あの性格ゆえのことかと思っていたが、セックスもまた経験を積むことで腕を上げていくものだ。
つまりヴィゴはこれまでにも――――。
目の前が真っ赤に染まった。
きんいろのはずの、ヴィゴのかみのいろまでも。
「そういうって、セックス？あるよ」
「ヴィゴ……」
「あんたのことを知りもしないうちのことまで言われても、いまさらどうにもならないよパートリッジ」
手がまた、ヴィゴの首に伸びようとしていた。ヴィゴは逃げようとはしなかった。
――――さっきと同じ。「それが嫌？許せない？もう一緒にいられない？」
「…………分からない」
「やきもちなら、いいけど。それで怒られても罵られても俺は俺だよ。どうしようもないよ」
「…………ヴィゴ」
「抱きごこちの良さそうなパートリッジ、俺のかわいこちゃん。泣くほど俺のことが好きなら、俺の過去のアレコレのことは思い出さないようにしないといけないよ？」
「君が好きなんだ……」
「俺も好きだよ、不器用なパートリッジ。今は１番、あんただげが。それじゃ駄目？駄目なら俺は出て行かなくちゃならないよ？」
「行かないでくれ、ヴィゴ……」
「じゃあこの俺で我慢して、パートリッジ。もうどうしようもないんだから。これが丸ごと俺なんだから」
「ヴィゴ……」
もう１回する？と聞かれたので首を振った。
立っていられなくなったので跪くように座り込むと、ヴィゴもそれにあわせて跪いた。
「面白い奴だなぁ、あんたは。……ああ、大丈夫嫌いにはならないから、安心しな、パートリッジ」
「……うん」
「手をつないで、一緒に寝ような、パートリッジ」
ヴィゴはわたしの額にキスをした。
「厄介なパートリッジ。あんたのその、ややこしいところが、俺は気に入っているよ」
今度は口に。今度はさっきよりももっと、ずっと長いキスになった。